川から東京のまちをウォッチング

「隅田川川下りツアー」に参加

→上を首都高が走る「日本橋川」にて。この「屋根」をとるには6000億かかる。

このところの悪天候で、雨の中の決行を覚悟していたのですが、27日は幸いにも川下り日和に。浅草「吾妻橋」のたもとから釣り舟に乗り込み、ライフジャケット装着と万全の日よけ対策で午前9時、3時間のツアーに出発しました。案内役は、親水活動や「神田川」の浄化活動に取り組まれている「神田川ネットワーク」の糸井さん。

「隅田川」は「橋の博物館」と言われるとおり、上流の「千住大橋」から「勝鬨橋」まで、さまざまな種類の橋が計25橋も。関東大震災の復興事業によって、多くの橋が架けられましたが、橋をそれぞれ特徴的なものにする方針のもと、個別に設計を行ない、吊り橋の「清洲橋」、アーチ型の「永代橋」、中央が開閉する「勝鬨橋」などの秀作が生まれました。この3つの橋は今年、国の重要文化財になっています。一方で、色については赤や黄色の橋などもあり、今の「景観」の考え方からすると、自然と調和したある程度の統一感がほしいものです。護岸には遊歩道や壁画を展示をする「ギャラリー」が設けられるなど、親水性を図る工夫は随所に取り入れられています。

江戸時代からにぎわいの中を流れ、今も都内有数の盛り場を結ぶ「神田川」へ入ると、資材や製品の搬出入に水運の便を生かすなど、昔から人々の生活になくてはならない河岸のたたずまいが。ある会社では廃棄物を作業船に載せている光景も見られ、武蔵野台地の降雨や湧水を集めて東京湾へ排水するなど、生きた川であり、活きる川であることを実感しました。お茶ノ水から水道橋にかけての岸部は、都心とは思えない緑の豊かさが広がり、駅のホームから眺める風景とはまた違った趣きです。川面を渡る風が一気に涼しくなり、ヒートアイランド現象を緩和するための緑のネットワークがいかに大切かを再認識しました。今の考えに照らすと、川に背を向けて立つ建物がいかにも惜しい・・。川を表舞台にしたまちづくりが望まれます。非常階段で一服するサラリーマンの姿にも何度も遭遇。

「神田川」から分岐し、「豊海橋」で「隅田川」に合流する「日本橋川」は江戸を支えた物流の大動脈。今はご存じの通り、5㌔弱のほとんどの区間で首都高速道路に覆われています。まだ「環境」「景観」といった概念のなかった当時、オリンピックのために工事を急ぐには、人家に影響のない川の上というのは手っ取り早かったのでしょう。一方で、江戸城防衛のための石垣がそのまま護岸として利用されてもいます。河口に近いため、潮位の影響を受ける「感潮域」であることが特徴。満潮時には「下流から上流に水が流れる」状態が起こります。河口まで500㍍のところでようやく青空が広がった時にはなんともいえない開放感。

川を管理する都の部署は複数にわたっていますが未だに連携は十分ではありません。川の両岸が区によって異なる姿も見せています。やはり水系全体で一貫性を持つべきです。3つの川の沿線には5つの防災船着場が設けられていましたが、その存在の周知と市民参加の防災訓練はどの程度行なわれているのでしょうか。

1997年の「河川法」改正で加わった大きなポイント、「環境」と「地域住民の意見反映」を尊重し、治水・利水だけでなく親水もプラスして、都心では唯一の自然環境であり、生活に密着した「川」を考えていかなければなりません。

↓(左)緑効果で体感温度がぐっと下がった「神田川」。(右)「隅田川大橋」たもとにある読売新聞ビルは、背後の建物への風の通りを確保するため中央に風の道が。「愛は地球を救い、風は東京を救う」