住民主役の復興のまちづくり

委員会視察報告②神戸市

→阪神・淡路大震災では鉄筋コンクリートの橋脚が甚大な被害を受けた。1970年代の橋脚に震災時の強震動を加えた際の破壊現象を解明すべく、視察前日に実験が行なわれた。実験の一般見学はできず、報道を通じて公開される。「兵庫耐震工学研究センター」通称「E-ディフェンス」にて。  

  建設委員会、2つ目の視察テーマは「災害後の対応と復興」。2日目は神戸市、3日目は三木市を訪れました。

●再開発事業(神戸市)

  昔からの古い木造密集地域において大規模な家屋の倒壊や火災が発生したという教訓を生かし、神戸市では防災性に優れた安全・安心でかつ快適であることを基本に、復興のまちづくりに着手しました。まず、発災から2ヶ月間、建築基準法に基づく建築制限を6か所に適用し、無秩序な建築行為を制限。その後、土地区画整理事業や市街地再開発事業の施行区域を決めましたが、避難所などでの生活を余儀なくされた住民への周知は不十分であることから、この段階では、骨格となる道路や公園などの決定にとどめ、生活圏域については別途、住民との十分な合意形成を踏んだ上ですすめることとしました。

  まちづくりにおいて、住民の意見反映、住民との合意を図る過程は最も重要です。神戸市では、全地区に設置されたまちづくり協議会に対して活動費を助成、また、まちづくりコンサルタントやアドバイザーを派遣したり、各地区に現地相談所を設置するなど、市民との協働のまちづくりを推進しています。
  現地視察を実施した新長田駅北地区は、震災復興市街地再開発事業として今年度までの14ヶ年で事業がすすめられ、建物移転率98%、人口回復率は120%という状況です。59.6ヘクタールの地区面積に、民間共同住宅が8ヶ所、市営共同住宅が2ヶ所、またパイロット産業として、シューズギャラリー(プラザ)が15店舗で構成されました。21のまちづくり協議会からの提案は随所に活かされており、歩道部には六甲山の湧水による「せせらぎ」が設置されました。(9/9付サイトに写真あり)東部地区には「いえなみ基準」という景観市民協定が結ばれ、屋根は道路に面して傾斜させる、塀が必要な時は生垣などで緑化する、色彩は淡い色にし、汚れが目立たないようにする、などが決められました。これらを遵守することを、まちなみ整備事業助成金(工事費の2/3以内かつ500万円限度)の対象条件としています。

  尾道市もそうでしたが、神戸市の再開発事業も、丁寧な住民との対話、合意形成の上にすすめられており、本区においても「区民との協働」を実践すべく、まちづくりについては住民の意見を反映する手法を取り入れることが重要です。

●独立行政法人防災科学技術研究所「兵庫耐震工学研究センター」(三木市)

  このセンターでは、実大規模の構造物に3次元で震動をかけ、なぜ壊れるか、どこまで壊れるか、どう壊れるか、構造物の破壊メカニズムを研究しています。実験棟には400トンの天井クレーンを2基所有。その下に設置される震動台(写真参照)は、国内にある4施設のなかでも、1200トンという最大質量を誇っています。木造建物、橋脚など、さまざまな実験が行われていますが、準備や片付けにも時間を要するため、1か月1件のペースで研究がすすめられています。ちょうど前日に、1970年代建設の橋梁に阪神・淡路の強震を加えた際の破壊現象を解明する実験が行なわれており、その実験装置を見ることができました。当時、高速道路が倒壊したシーンは忘れることができません。この実験データが、橋梁研究者に提供され、今後の耐震設計や学術的研究に活かされることになります。
  屋外ヤードに、すでに実験の終わった学校の校舎一部がそのまま置かれており、耐震化されていない校舎と耐震化が済んだ校舎では、目視においてもその差は歴然としていました。学校では、発災時、子どもたちに机の下にもぐるように指導していますが、子ども用の小さな、しかも動いてしまう机ではその効果はもはや期待できないといいます。やはり地域の核であり、避難所ともなる学校校舎そのものの耐震化を速やかにすすめていかなければなりません。