堤防強化は景観の視点も大切に

ゼロメートル世界都市サミットから

→気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書の主要執筆者・沖大幹東大教授の基調講演。

 国内外11都市参加のもと、タワーホール船堀にて15日から開かれていた「第一回海抜ゼロメートル世界都市サミット」が今日閉幕しました。

 基調講演に立たれた沖大幹教授は「気温上昇は90%の確率で人間活動によるもの。報告書では、深海の熱膨張などにより海水面が上昇、その結果沿岸域の危険性が高まるなど警鐘を鳴らしているが、報告はあくまでも予測であり、必ずこうなるというものではない。CO2削減などの緩和策と、海水の淡水化・雨水普及・再生水利用などの適応策の両方を講じていくことが重要。IPCCの予測・展望が実現しないように姿勢を変えていくことだ」と話されました。

 スピーチセッションでは、各都市の現状や課題、適応策の紹介がありましたが、印象的だったのはオランダ北ホラント州のリンスケ・クロイシンハ副知事の発表。「景観や歴史を守りながら堤防事業をすすめる。景観の質を維持しながら、極めて短期間に堤防強化を行なう、地域社会の要請実現のバランスをとるためにも、計画を展開する上での住民参加や共同出資が大事」というお話でした。学者の専門性とは異なる、こうした視点もまた行政には重要です。先月の建設委員会における質疑で、私は「区は景観行政団体を目指して準備をすすめているが、景観法には川は重要公共施設と位置付けられている。計画策定に向け住民参加のワークショップを行なっていく中では、堤防の姿についても広く区民と議論を深めていくべき」と意見を述べたところです。

 ホスト・シティである江戸川区は、国と区が事業主体となってすすめようとしている「スーパー堤防事業によるまちづくり」を紹介しました。この必要性について、区は「温暖化の進行で予想を上回る洪水が起こる可能性がある。ゼロメートル地帯が7割を占める本区には避難地となる高台が必要」と説明しています。堤防強化事業は順次すすめられてきていますし、江戸川では現在、緩傾斜堤防事業が進行中。この上、多額の税金を投入し、住民を移転させてまでのスーパー堤防事業が本当に最善と言えるのか、慎重な議論が必要です。まずは温暖化をストップさせる方策をそれぞれの地域で着実に実行することが重要であり、このことを江戸川区から発信できたことは、サミットの成果でした。
  区はすでに「地域エネルギービジョン」を策定、行動中ですし、沖教授も前述の通り「IPCCの予測を覆すための行動を」と呼びかけています。もうひとり、基調講演されたアメリカにおける都市工学の第一人者ウィリアム・マキューソン氏も結びにこう話されていました。「(有効な施設かどうか)決定権を持つのは自然だ」と。

  12月10日発行の江戸川ネットの機関紙「それゆけ!レポート」では、「スーパー堤防事業」についてレポートしています。みなさんのご意見をどうぞお寄せください。

↓北ホラント州副知事の発表の一部。右は最終日の共同宣言の様子。