住民の意見反映を盛り込んだ「まちづくり条例」を

2008年度決算特別委員会報告⑤

都市開発費では、一般質問に関連して、住民意見反映のしくみについて、具体の提案をしました。

国や都との共同事業として地元にやってくる大型プロジェクト、また、区の事業であっても、新しい施設建設、たとえば最近の子どもの未来館の建設などは、住民の意見が反映されていない状況がある。

まちづくりは、都市計画法や建築基準法に則って、全国統一的に運用されてきた。しかし、まちに住むのは地元住民であり、その生活を実質的に守るのは自治体。全国一律の法制度や都道府県組織ではきめ細かな対応は難しく、その限界が明らかになって、自治体による規制・調整制度も生まれてきた。

区長は、住民の意見反映について、一般質問の答弁の中で「法的手続きの中でできればいいのであって、自治体のシステムを拡大するとルールはどうなるのか」と話された。しかし、地方分権の流れの中では、自治体が自立性を持ってまちづくりをすすめるようになっている。実際、江戸川区にも住民参加のまちづくりのために「都市整備促進条例」と「地区計画等の案の作成手続き条例」があるが、住民の意見を反映するところまでは至っていない。これについては、国の確たる制度がない中で、自治体が工夫を凝らすことがまさに地方自治であり、大きな意味がある。

自治体の工夫としては、都市計画審議会の中に、事業の中身をじっくり審査する専門部会を置いたり、都計審とは別に、まちづくり市民会議を設けて事業の集中審査をして、この会議からの意見書が都計審に正式に提出され、審議の重要な参考材料にしているところなどがある。決定プロセスに市民の意見が十分反映されるための具体的な取り組みであり、独自にまちづくり条例に定めている。江戸川区でも、2つの条例を土台にして、総合的なまちづくり条例に進化させ、ここに住民の権利として、意見反映のしくみを盛り込んでいくことを考えるべき。

三鷹市では、無作為抽出で住民代表を選び、徹底した情報公開のもと、外環道についての市民討議を行なっている。また、住民投票条例を持つ自治体もあるが、実践例はまだそう多くないようだ。果たして何が有効か、自治体もそれぞれ知恵を絞っているが、このしくみを持つことは自治権の拡充であり、さほどお金のかからない制度資本でもある。

自治体として必要性を感じないので条例はつくらないというのでは、依然として行政主導であり、肝心の住民は置き去りのままだ。区長は一般質問答弁で、選挙で選ばれた人の行動に言及された。選挙で選ばれた首長の意思は尊重されるべきだし、都市計画決定を議会の議決事項にすることも考えられる。しかし有権者は白紙委任したわけではない。首長と議会だけでなく、そこに住民参加が保障され、三者の緊張関係が機能するのが自治体の民主主義ではないか。

まちづくり条例は、自治体からの発意というよりは、住民からの要望がまずあり、それを受けて自治体が条例の検討に入ったという経過が主流だ。まちづくり基本計画がプランなら、まちづくり条例は、それを住民参加で実現させていくツール。これが両輪になることが望ましい。この条例によって、いかなるまちづくりにも意見反映が保障されることになり、区民とともにまちづくりをすすめていく中では、このしくみを確立する意味は大きい。意見反映はタイミングも大事。計画案策定の段階や、計画決定の前段階など、いくつかの段階での意見反映のしくみが理想的だ。ぜひ積極的に検討することを要望する。