見直しに向けて? 前原大臣、平井のスーパー堤防を視察

わずか1.2haに総額82億円、普及しない本事業をどう評価?

→国交省の説明を聞く前原国土交通大臣。左から3人目が多田区長。

 ダム問題、JAL再建、高速道路など、重要課題をいくつも抱える前原国土交通大臣が、18日午前、スーパー堤防事業地視察のため、すでに完成している本区平井7丁目を訪れました。
 
 10時45分から15分間という予定でしたが、10時半には現地到着。国交省職員や江戸川区長、区土木部長、現地住民の方々、地元の初鹿明博衆議院議員などの説明を受けながら、予定より倍の30分をかけて現地を見て回られました。
 
 これまでお伝えしてきたとおり、この地のスーパー堤防事業と一体となったまちづくりは、隣接する財務省の公務員住宅も予定エリアに入っていたにもかかわらず、建て替えの時期ではないことを理由に区域からはずされました。そのため、荒川沿いの土盛りをした上に建つ民家と、従前のままの公務員住宅との境は、高さ5mほどの絶壁になっています。しかしこうしたマイナスの部分は、平井のスーパー堤防を紹介する区の広報や、本事業の説明において、国も区も触れることはありません。

 今日の行政側のスケジュールでも、この部分をあえて視察しない(させない)予定となっていたようで「ぜひそこを見ていただこう」と声が上がると、担当者から「そちらは行きません」と。しかし、初鹿議員が前原大臣を誘導し、その絶壁を見ていただくことができました。

 区では現在「景観計画」策定に向けて区民参加で作業がすすんでいますが、2年前には区民との協働で「景観まちづくりワークショップ」を実施。区の景観を4回にわたってくまなくチェック、良い景観、悪い景観などに○×で分け、500にも及ぶ意見を集約しました。そのときの「平井7丁目スーパー堤防に対する意見」は「スーパー堤防と従来の堤防の境界が怖い」「新しい街並みだが電線が多く見苦しい」ということで、すべて×判定になっています。

 一方で、これから予定されている北小岩は「落ち着いた街並みである」。江戸川沿川は「スポーツをする人たちで活気がある」「広々として気持ちが良い」「今も鮎が捕れる」「小岩菖蒲園は風情のある憩いの場」「ビオトープがある」など、すべて○判定。篠崎も「浅間神社の緑の空間が素晴らしい」「浅間神社と篠崎公園、妙勝寺が一体となった景観を形成」と○判定になっているものの、「まちづくりで今後が不安」「スーパー堤防との関係が気になる」との声が。こうした意見をまとめた資料を大臣にお渡しすることができました。

 景観は、これからのまちづくりに不可欠な視点です。そこに住む人の生活、まちの歴史なども含めた景観の考え方は、スーパー堤防構想ができた時代にはありませんでした。この視点を取り入れたまちづくりを目指す区としては、すでにできているまちづくり計画においても、改めてこの視点を持って見つめなおし、新たな価値観が反映されたまちづくりにしていかなければなりません。

 今日は、今後事業が予定されている北小岩の住民の方々も駆けつけました。「江戸川にも来て下さい」と声をかけられた大臣は、にこやかにうなずかれていました。

↓左は、スーパー堤防上の民家と公務員住宅の境。スーパー堤防の基本である30Hには全くなっていない。平井の本事業は「完成」と説明されるが、ここを指摘されると行政の説明も「まだ完成していない」となる。右は、視察の様子を取材する報道関係者。