もっと利用しやすい成年後見制度に

平成21年度決算特別委員会報告⑨

 介護保険制度や支援費制度の施行に伴い、福祉サービスも利用者と事業者との契約によることとなりましたが、当事者が認知症や、知的・精神障害を抱えていて判断能力が不十分な場合には、誰かが代わって契約を結ぶ必要があり、そのような時に活用できるのが成年後見制度です。本人の意思確認を基本とする金融機関の手続きや、 悪徳商法の被害防止策としても本制度の利用が考えられます。
 
 家庭裁判所から選ばれた後見人等が、その判断能力を補い、本人に代わって財産の管理や各種契約などの法的な手続きを行うことで、本人の権利や利益を守ることができ、超高齢社会においては、ますます重要になってくる制度です。

 しかし、21年度の区の実績はわずか19件。区には、弁護士や司法書士、社会福祉士など、いわゆる士業による職能後見、社会福祉協議会が後見を受任する法人後見、都の講習を受けた市民による社会貢献型後見の3種類があり、それぞれ、9件、6件、4件という内訳です。

  実際申し込みをしてから後見に至るまでにかかる時間は3ヶ月ほど。この間、親族がいないかどうかの戸籍調査や、親族の意向確認に約3週間。区長申し立てという形をとって、家裁に申し立てをしても審判が終わるまでに、精神鑑定がない場合で1ヵ月、ある場合で3ヶ月ほどかかっています。調査に慎重を期すのは当然ですが、この間、緊急的な対応が必要となるケースもあり、そのような場合に、区の福祉的な対応として財産管理に取り組むなど、後見開始までをつなぐ手立てが必要ではないか、と質しました。

  答弁は「民生委員や地域包括支援センター、健康サポートセンター、各課窓口などでの日常的な援助の中で、成年後見につなげている。この間、できる範囲での福祉的サービスを提供していく」というもの。新たな展開への意欲は聞けませんでした。

  区は、各課で対応しているとのことですが、そもそも制度の説明をすべき介護保険課や障害者福祉課の窓口、介護保健相談室のカウンターには成年後見制度のパンフレットさえ置いていません。まずは、こうした状況を改善すべき、と指摘しました。

 本制度に早くから力を入れている品川区では、区が在宅介護支援センター、成年後見センターと常に連携し、在介支のケアマネージャーや後見センターの職員と月2回の定期的なケース会議を持ちながら、個々に適切に対応。この間、財産管理が必要と判断されれば、社会福祉協議会が通帳を管理しています。また、同区では、後見制度活用のための助成も実施。社協への寄付金6500万円を原資に、申し立て費用12万円全額、後見人報酬月1万円以内、交通費など実費年5万円以内を区民に限定して実施しているのです。もちろん、申請を受けてから、預貯金などの審査を経て、助成の決定を行なっています。  

  区では、本人の資力に多様に対応するため、3種類の仕組みを設けているものの、やはり費用はそれぞれに必要であり、こうした助成制度も検討すべきと意見を述べました。