公益通報制度の不備をただす

平成21年度決算特別委員会報告⑩

  事業者内部からの通報、いわゆる内部告発をきっかけとして、企業不祥事が相次いで明らかになったことを契機に、法令違反行為を労働者が通報した場合、通報者が解雇等の不利益な取扱いを受けないよう保護され、また、事業者の法令遵守を強化するため「公益通報者保護法」が平成18年4月から施行されています。これに伴い、江戸川区でも「江戸川区職員等による公益通報の処理に関する要綱」が定められ、翌19年4月から施行されています。職員の定義には、もちろん、指定管理者や業務受託者も含まれます。

  区は、通報に基づく調査と必要な是正措置をとるために「公益通報委員会」を設置していますが、この委員会メンバーは副区長を委員長とし、教育長、総務部長という内部の3人で構成、庶務は総務部総務課が担当するとしています。事前に23区の状況一覧を請求しましたが、半分以上の区が弁護士など外部有識者を入れています。区の現状では、職員が通報しにくい環境にあり、また仮りに、委員に直接関わる事件の通報があった場合、この構成で公平な処理が行われるか、など疑問が残ります。そこで、①外部委員を入れる必要性についての考え②通報があった事件について、区のHPなどで公表する取り組みについて質問しました。

  庁外に、区長から独立した行政監察員を置いている千代田区をはじめ、外部有識者を委員としている区では、外部委員への通報も可能となっています。このように、通報しやすい環境を整備することで、事件を未然に防ぐ確立も高まります。身内の問題を身内で処理すれば甘くなりがちで、同様の問題を繰り返したり、あとになってより深刻な事態に発展してしまうこともあります。委員会に利害を持たない立場の人が一人もいないという現状は早急に改善すべきです。

  また、要綱では、通報があって是正措置がとられた場合、その旨を通報者に通知する、とあるだけですが、こういう通報があったので調査した結果こうなった、ということを、結果のいかんに関わらず、その理由も付して公表するしくみを持つことは、制度の目的のひとつであるコンプライアンスの推進にもつながります。

  たとえば、学校の担任が児童虐待の状況を察知して、上司である校長などに再三報告しているにもかかわらず、適切な対応がなされていないような場合、担任がこの制度を活用することで、別のルートからも児童を救うきっかけができ、最悪の事態を未然に防ぐとともに、職員の法令遵守、対応意識の向上にもつながるはずです。

  回答は「十分検討していく」というもの。
  職員の違法行為などあってはならないことですが、江戸川区でも忘れた頃にまた起きるといった過去がありました。本制度運用について、区としてチェック&バランスのしくみを改めてきちんと整備しておくことが重要です。