八ツ場ダム + スーパー堤防 = ?

街づくり・防災対策特別委員会八ツ場ダム視察敢行

 12日(金)、街づくり・防災対策特別委員会の視察で八ツ場ダム予定地へ行ってきました。昨年の11月、江戸川ネットとして視察して以来、ちょうど1年ぶりの現地訪問です。

 八ツ場ダム建設の目的は、利根川流域の洪水被害軽減、新規都市用水の供給など。しかし、基準地点・八斗島(やったじま)における基本高水量毎秒22000㎥の積算根拠を示す資料が存在しないことが、馬淵国土交通大臣の答弁で改めて明らかになりました。私たち生活者ネットワークは、八ツ場ダム住民訴訟に関わる中で、すでにこの事実を把握し、基本高水量は、河川管理者である国土交通省が恣意的に定めてきたものであることを指摘してきたところです。
 また、八ツ場ダムから利水しなければならないとする東京都はすでに水余り状態。都の保有水源量は687万㎥ですが(都公表値は、地下水を含めていないため623万㎥)、実際の使用量は488万㎥であり(2008年度)、日量200万㎥もの差異があるのが実態です。他県においても同様の状況にあり、治水・利水両面において、建設の理由などないのです。 

 片道約4時間の行程では、区作成の15ページに及ぶ資料をもとに八ツ場ダムがなければならない説明がなされ、過去の洪水の映像などが放映され続けました。
  洪水調節における区の説明は「奥利根流域や鳥・神流川流域にはダムがあるが、吾妻川流域にはない。野球で言えば、ライトとレフトは万全だが、センターががら空きの状態。ここに八ツ場ダムができる意味は大きい」と。しかし、国交大臣が洪水想定についての再検証を指示したばかり。過大と思われる現状データに基づく説明に説得力はなく、センターに球はもう飛んでこないのでは? と突っ込みたくなるというものです。
 一方、現地で国土交通省が用意した資料は「八ツ場ダムの経緯」と「八ツ場ダムの生活再建対策」というA3版2枚のみ。旧態依然、熱い区と、いくらか冷静な国との温度差を感じたのは私だけでしょうか。

 東吾妻町では、1年前に比べ、周辺工事が確実にすすみ、八ツ場の象徴として有名になった十字架のような湖面2号橋もほぼ完成。照明などの工事を残すのみとなっていました。
  代替地の造成もすすんでいるとはいえ、まだまだ居住者はまばらです。かつて川原湯地区には370世帯あったものの、すでに東京や周辺市へ転居した方々も多く、代替地に移転するのは134世帯に過ぎません。切り取られた山肌は砂防ダムで固められ、造成地での地滑り被害がやはり懸念されます。とはいえ、遠く離れた一都五県の住民のためと説得され、翻弄され続けてきた現地住民の方々への生活再建策は急がれなければなりません。

 さて、本体のダム工事は中止か、はたまた建設か? その答えは1年後となりますが、再検証すれば、建設する理由が見当たらないことが改めて明白になるはずです。

 上流の八ツ場ダムは必要、下流のスーパー堤防はもちろん必要とする江戸川区の判断に共感する国民はどれほどいるでしょう。生活者の視点、国民世論とかけ離れた行政は不幸を招くだけです。

↓ダムサイト予定地の岩盤の強度を測るために掘削された箇所。強度は万全とのこと。右は、吾妻渓谷内にある仮排水トンネルの終点口。