それでも今、「スーパー堤防」か?

区民主催のシンポジウムにパネラーとして参加

 3つの地域の住民で構成されている「スーパー堤防問題を考える協議会」主催による集会に参加しました。4月の区議会議員選挙に向け、主催者が事前にアンケートを実施。この結果の公表とともに、今日は各会派の代表がパネラーとなり、住民のみなさんの前でスーパー堤防に対する考えを述べました。推進派の自民・公明会派の参加はありませんでした。

 区がスーパー堤防との共同事業と説明する「北小岩一丁目東部地区区画整理事業」については、3月14日に開かれた東京都都市計画審議会において、住民から出された意見書や、参考人を含めた陳述内容が不採択となったことから、今後、区から事業認可申請が出され、都がこれを認可する、というプロセスがすすめられていきます。ここに至る問題点については、私の最後の一般質問によっても明らかにしたところです。シンポジウムでも、議会質問をもとに、説明と異なる事業となってしまっていること、また、肝心の住民合意に問題があること、を論点にしました。

 ところで、このたびの地震によって起きた大津波は、世界最大の規模と強度を誇り、ギネスに認定されていた釜石湾の防波堤を無残にも決壊させました。全長2000m、厚さ20m、海上高さ8m、さらに最深63m。その海底に東京ドーム7倍という700万㎥の巨大なコンクリートの塊が沈められていたものです。マグニチュード8.5を記録した三陸地震(1896年)規模に耐えられるよう、1200億円をかけ、30年以上の歳月を要してつくられたものの、完成後わずか2年足らずでの崩壊となりました。
 2年半前、区で開かれた「第一回海抜ゼロメートル世界都市サミット」で基調講演されたアメリカの都市工学の第一人者W・マキューソン氏の言葉が思い返されます。「(有効な施設かどうか)決定権を持つのは自然だ」。

 区及び推進派は、この大震災を受けて「だからスーパー堤防が必要」とさらに声を上げたいところでしょうが、果たしてそうでしょうか? スーパー堤防は単に土を盛るだけの構造です。地盤のいい自然堤防の上に位置する本地区に、延長たった100mの範囲で人工的な盛り土をすることは、災害時にかえって危険を増幅させるのでは? 制度では堤防高30倍の幅を持たせるとしていますが、それも確保できていない狭小な土地です。 

 スーパー堤防の上に住宅街をつくり直すという事業は、基盤となる堤防(盛り土)事業のメンテナンスが効かないこともデメリットのひとつです。今回、清新町でも至る所で液状化が発生しましたが、埋め立て造成、盛り土造成の危うさを改めて露呈したと言えます。

 災害対応、復興対策に莫大な費用を要する国難の今、地盤は強固で、広い河川敷を持ち、日常生活に何の支障もない、わずか1.4haの地に、国はこの先43億円を投入する判断をするでしょうか。国はスーパー堤防事業を一旦廃止とし、新年度予算をつけず、都は「本事業は、スーパー堤防を前提としていない」と言っています。この期に及んで「国の制度なのだから、どこまでも要望していく」とする区の姿勢は、全く状況判断のきかない幼な子のようです。

  制度創設から四半世紀。時の流れの中で、その課題が明確になり、一旦廃止とした判断に多くの国民が共感しています。一度決まったら変わることのなかった従来の公共事業の考えを改め、計画どおりすすめない、という判断をすることが、区に求められていると考えます。現実的な対策に転換すべきです。