高台のニュータウンでの液状化に学べ

被害状況の十分な点検を

 28日(日)、スーパー堤防・街づくりを考える会が主催した会合のテーマは、今回の大地震により区内で発生した液状化について。解説は、会のメンバーであり、地質学者である渡邉拓美さん。

 江戸川区は、盛り土によるスーパー堤防事業を推進する理由のひとつに液状化対策を挙げてきました。しかし、1972年に、その盛り土造成がなされた清新町で皮肉にも液状化現象が起こる一方、盛り土されず、低いままの隣地・西葛西では全く起きていないのはなぜなのか?

その理由は、清新町の土地の成り立ちにある、と渡邉さんは言います。

 清新町は1960年には干潟であり、1972年から10年かけて埋め立てられ、そこにできたまち。その手法は、近くの海底の砂をポンプで吸い込んでパイプで埋め立て地に流し込むという、ポンプ船での浚渫によるもの。近場からの土砂を使うことでコストは抑えられますが、どうしても水を多く含んだ層ができてしまいます。今回の噴砂の大部分は極細粒の砂。場所によっては貝殻片も混ざっており、当時の浅い海底から採取され、埋め立てに使われた砂が液状化を起こして噴出したもの、と渡邉さんは分析します。

  こうした軟弱な人工地盤の上に厚く重い盛り土を載せてつくったニュータウン。不同沈下で傾いた戸建住宅については、基礎部分の修繕費の半額を区が助成することになりました。江戸川区の被災については国の法律で救済されないため、区独自で実施するものです。

 清新町といえば、その大部分は高層住宅。これら高層ビルでも支持杭の「ぬけあがり」現象を起こしているところも。しかも軟弱地盤の厚さは50m近くもあるそう。ビルの周囲だけを修復するのではなく、元のように完全に埋没させなければ従前の耐震性は保たれませんが、大きな建物であればあるほど、メンテナンスは容易ではないでしょう。

 盛り土の上にまちをつくるというスーパー堤防事業は、まさに同様の問題点を抱えることになります。国の調査によって、液状化対応が不必要であることが判明した、安定地盤の北小岩を、わざわざ盛り土してスーパー堤防と一体のまちづくりをすすめるより、清新町での液状化対応にこそ、区は力を入れるべきではないでしょうか。

 これを機に支持杭の強度、面積あたりの本数、劣化の程度など一斉点検を行い、改善すべきは指導し、修復を確認する。悪いところがなければそれでよし。そして、いずれにしてもきちんと説明責任を果たす—。

 想定外の被害を受けてはじめて基準は強化されてきた、と渡邉さん。被害状況の十分な点検が今、求められます。