学校栄養士の民間委託は子どもの最善の利益にかなうか?

江戸川区が来年度から導入の方向

 江戸川区が来年度からの実施を見込んでいる、学校栄養士の民間委託導入案が、16日(金)の区議会文教委員会にて初めて説明されます。委員会にはすでに6月、この方針に反対する陳情が出され、審査が行われてきています。

 行財政改革の中で、区は、区採用の栄養士を退職不補充とし、非常勤職員をあててきましたが、来年度からこの領域を民間委託する方針。調理業務を委託する事業者に栄養士も一括委託するというものです。これまでの経緯については、江戸川ネットのトップページ堀場りさ子のHPもあわせてご覧ください。

 学校給食は、2008年に一部改正された学校給食法の中で、その目的は、食育中心へと転換し、給食は教育の一環として実施されています。そのキーパーソンとなる栄養士のしごとは、献立作成や食材の発注・管理にとどまらず、食育、アレルギー対応をはじめ、子どもの発達状況について担任と連携するなど、学校職員としての職責は大変重要です。職員室で執務し、個人情報を扱う立場でもあります。今回の方針で、正規職員と同様の職務が執行できる整備がどのようになされるのか、問題点を丁寧にチェックしていく必要があります。

 非常勤職員は現在12校に配置されており、7年勤務が最長ですが、2〜3年での退職が多く、中には年度途中で辞めていく場合も。週30時間という制約の中で、正規職員と同じ重責を担う。けれども一年単位の不安定な雇用であり、正規との収入格差も歴然(正規年収860万円、非常勤350万円)。雇用する区としても、人材確保に苦慮しており、本来常勤を置くべき職場に、非常勤をあて続ける矛盾が増え続けるのは好ましくない——。民間委託すれば、こうした直接雇用の難題からも解放されると考えた? 

  昭和60年の文部省体育局長の通知には、献立作成に関し、「教育委員会及び学校が責任をもって実施すべきものであり、委託の対象としないこと」とされています。これについて、区教委は「校長と教育委員会が確認し、必要に応じて変更する」と説明していますが、多忙を極める校長先生、大丈夫? 
 
 行政の都合ではなく、子どもたちの利益を第一に、最善の学校給食にしていくための方策が求められます。

 もうひとつ、栄養士をとりまく大きな問題点も。
 2008年度から栄養教諭制度が導入されましたが、全国で3853人の栄養教諭が誕生している中、東京都はわずか36名。これは都が、一自治体1名という基準を設けたこと、また、栄養士としての在職12年以上を条件としているからです。江戸川区には1名配置されていますが、まだいない自治体も。新卒の若い方が東京都と他県の学校栄養士に合格した場合、この優秀な人材は他県に流れていくといいます。なぜなら、都に就職しても、栄養教諭になれるのは13年後だからです。

 義務教育において、食育、学校給食がその重要性を増し続ける中、こうした行政の状況は早急に改善が必要です。