直接請求、大事なことは市民が決める

東京で22年ぶりの直接請求運動

東京電力管内の原発の是非を問う「都民投票条例」制定を求める直接請求は、東京では22年ぶりの直接請求運動です。

1989年に行われた直接請求は、東京都に対して「食品安全条例」の制定を求めるものでした。このきっかけとなったのは、86年のチェルノブイリ原発事故。残留農薬や食品添加物の問題に、食品への放射能汚染という大きな不安が加わり、大消費地・東京において、新たな食品安全の法制化を求める運動へと広がったのです。必要最低署名数20万筆に対し、最終有効署名数は55万筆。都知事はこれを受け、反対の意見を付けて都議会に提出、委員会等で請求代表者の意見陳述など実質審議が行われ、門前払いではない、画期的な対応がなされましたが、90年3月議会で否決となりました。しかし、これをきっかけに、消費者の立場に立った食品行政が進展。食品安全予算の倍増や、「東京都における食品安全確保対策にかかる基本指針」策定などの成果を生み、2004年、悲願の「食品安全条例」が制定されています。市民の運動が15年の歳月を経て実を結んだのです。

今回の直接請求は、電力の最大消費地・東京都において「原発の是非を問う」という個別設置型の住民投票の実現を目指すものです。このタイプには、首長や議員が提案する場合と、地方自治法74条に基づいて住民が提案し、首長が議会の議決を経て制定する場合があります。今回も後者、住民による提案であるため、都内有権者の50分の1、22万人の署名が必要なのです。

条例に基づく住民投票の最初の実施例は86年8月、新潟県西蒲郡巻町の「巻原子力発電所建設の是非を問う住民投票」。有権者総数23222人のうち、投票総数は20503票で投票率88.29%。反対12478票、賛成7904票、無効121票。全投票の60.85%、有権者総数の53.73%が反対の意思を示したことを受け、2003年、東北電力は巻原子力発電所計画撤回を表明しました。

長野県佐久市では市長提案による「総合文化会館の建設の是非を問う住民投票」条例案が、成立要件を投票率50%以上とするなど、議会の追加修正を経て成立。昨年11月に実施され、反対が71%を占めたことで、市長は建設中止の判断をしています。

これに対し、あらかじめ住民投票の対象となる事項や発議の方法などを条例で定め、要件を満たす場合にいつでも投票を実施できるのが常設型です。一定数の署名を集めれば、議会の議決を経ることなく、必ず住民投票ができるものです。高浜市を皮切りに、我孫子市、大和市、川崎市など、広がりをみせています。住民投票条例とは別に、自治基本条例の中に定めを持つ自治体も112あります。(昨年10月総務省調べ)

第四回区議会定例会において、江戸川ネットの新村さんが会派代表質問を行った中に「新しい参加のしくみ」の提案がありました。区長は、間接民主制の議会の存在を強調する答弁を繰り返しましたが、こうした住民投票に代表されるように、住民の直接参加は確実に広がっています。地方自治制度において、間接民主制はこれからも根幹であり続けるでしょう。その一方で、これを補完・補強する大事なしくみとして「直接参加」の手法があることを、区長はもっと学習しなければなりません。そして、私たち住民は、この手法を、将来を左右する大事な局面で、慎重に、かつ適切に活用していきたいものです。