学校栄養士民間委託に標準人件費の整備を

2011年12月21日 20時58分 | カテゴリー: 子ども・教育

意欲ある優秀な人材確保のために

江戸川区が栄養士の民間委託を決めた最大の理由は、労働問題にあります。

区では、10年前から取り組んだ行財政改革により、区採用の栄養士を退職不補充の対象とし、非常勤職員へと移行させてきました。しかし、すでにご報告したとおり、常勤が必要な職場に週30時間労働の非常勤職員を充てることにはそもそも無理があり、現場にも支障をきたす、また、人材確保の面でも課題となり、民間委託によって、こうした難題をクリアしたい意向です。

労働面では、もうひとつ、偽装請負の疑念を払拭するという課題も。

栄養士は現場の衛生管理の責任者です。かつてのように、給食現場の関係者がすべて公務員であれば何の問題もありませんでしたが、現在最も多いパターンである、栄養士が常勤あるいは非常勤公務員、かつ、調理を民間事業者に業務委託している場合に起きやすいのがこの問題です。

「職業安定法」第44条には「労働者供給事業を行うものから供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」とあります。「委託」においては、公務員である栄養士が直接民間調理士ひとりひとりに対し指示を出したり、注意したりすることは認められておらず、旧労働省からも「受託した事業者が業務指示を与えるように」という通知が出ています。調理業務の委託は形式上「請負(委託)」の形を取るものの、実態としては調理業務のみを行う労働者が学校調理現場に受託会社から派遣されているのと何ら変わらず、同法及び「労働者派遣法」違反が指摘されているところです。

法に触れない方策として、調理業務請負委託契約の際の仕様書において、事業者側の現場業務責任者ひとりを特定し、栄養士がその責任者と連絡調整する中で、結果的に調理関係者全員に周知する、という体制がとられているところです。しかしながら、現実に調理や洗浄業務を遂行する過程で、これが遵守されているとは言い難い状況にあります。昨今、労働基準監督署において、こうしたチェックが厳しく行われることになったこともあり、自治体自らの法律違反とならないよう、コンプライアンスの観点から業務体制の見直しを迫られているのです。

こうした「委託」に対し、「派遣」の場合も課題があります。調理業務を「派遣」で対応すれば、栄養士からの指揮命令をはじめ、公務員と民間事業者が一体となる業務体制は可能です。しかし、「派遣」に関し、政令で定められた専門26業務であれば3年間、また、給食業務のように、それ以外の業務については1年間を経過した労働者に関し、事業者が同一の業務を継続する場合には、本人の希望があれば、その当事者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければならない、と「労働者派遣法」40条3は定めています。

学校給食は将来にわたり続くものであり、調理業務の重要性を認識し、かつスキルとキャリアのある人材の継続が自治体・事業者・労働者三者の利益ですが、この1年ルールは、特に雇用者側にとって負担となっているのが現状です。

江戸川区では、こうした労働面・雇用面での課題に対する打開策として、栄養士と調理業務の一括委託を導き出したわけですが、大事なポイントへの対応がなされていません。それは標準人件費の考え方です。

区は、これまでの非常勤職員に対し、民間委託ではフルタイムを前提としていることから人件費の増加はやむを得ない、としていますが、これだけでは不十分。区側が「学校栄養士」への相応の賃金水準を示すことが必要です。そうでなければ、自治体の直雇用であろうと、民間の採用であろうと、意欲ある優秀な人材の確保は望めません。実際の採用は民間が行うにせよ、子どもたちの発達や食育に寄与する重要な学校職員の職域です。委託にあたっては、標準人件費の考えを事業者に提示し、その水準を守らせる体制を敷くべきです。