行政訴訟で「裁判の公開」は守られているか

第4回口頭弁論傍聴②

行政訴訟について説明する弁護団の田村弁護士
行政訴訟について説明する弁護団の田村弁護士
  行政訴訟は、①訴えの提起②口頭弁論③証人尋問④結審⑤判決、とすすんでいきますが、行政訴訟における住民側の勝訴率は1割程度です。なぜ、こんなに低いのか。

  その第一は、行政裁量の問題。これは、法律に違反しているかどうかの一次的な判断をまずは行政にまかせ、行政訴訟になった場合、裁判所はひとまずそれを尊重する、ということです。今回、原告がさまざまに違法性などを主張しても、区が「住民は税金によって整備されたきれいなまちに住むことができるのだから、『公共の福祉』の増進に該当する」と判断して事業決定を行った場合、この判断が優先的に尊重されるということです。
  第二に、裁判所の意識。裁判所は「三権分立の一翼を担っている行政は、そもそも法律に違反することはしないだろう」と考えています。

  こうしたことが結果的に行政側に有利に裁判が運ぶ理由であることは、口頭弁論を傍聴していて実感します。裁判官は、原告に対し、まるで被告の代理人であるかのように詰問するばかり。しかもマイクを使わず早口でまくしたてています。原告側の主張を被告に確認することなどはしていません。よって、被告側の発言時間の短いこと。4回を終えて10秒くらいでは? そこで「裁判の公開」の原則に則り、傍聴席を埋め尽くす傍聴者に、その内容がよく理解できるよう、マイクを使うよう求めたところ、19日に行われた第4回口頭弁論では、このことがかないました。裁判所としても、こうしたまっとうな要望をしりぞけることはできないでしょう。

  行政側も、原告からの主張をまずは受け止め、提示された内容ひとつひとつをきちんと認否し、「裁判の公開」原則に従い、口頭弁論によって丁寧に主張することが、訴訟に臨むまっとうな姿勢ではないでしょうか。

  それにしても、三権の二つの権力がタッグを組んでいる現状のハードルは想像以上に高いと言えます。

 次回、8月22日(水)は、裁判長の判断で、法廷ではなく、書記官室という狭いところで、双方の主張の確認をする「弁論準備」になります。そもそも、スーパー堤防事業の法律的な位置づけを巡って対立している点について、整理されるものと思われます。裁判官は法廷の3人から2人に。通常は非公開で、傍聴者も原告だけなど、少人数に限定されることになります。「公開」から遠ざけたいという意図ではないかと勘ぐりたくもなりますが、これを経て、口頭弁論に戻ることに。関われるのは少人数ながら、重要な局面です。

 行政訴訟という、一般市民にはなかなか理解しずらい裁判について、少しでも理解を深めてもらおうと、弁護団が8P建てのパンフレット「この裁判をわかりやすくご説明いたします。」を作成しています。ご希望の方には無料で差し上げています。江戸川ネットにもあります。お問い合わせください。(ネット:5607-5975、弁護団3634-5311)