投票資格は修正すべきポイントだったか?

原発都民投票条例審査を振り返る

 都議会での原発都民投票条例案の審査では、市民が提出した原案では強硬に反対する議員や他会派の賛同が得られないとして、民主党と生活者ネットワーク・みらいにより、修正案が出された。これにより、付託された総務委員会での採決では7対7の可否同数となるまでに歩み寄ることができた。

 その修正案の主なポイントは以下3点。
① 投票資格者「16歳以上」「永住外国人」を削除し、「日本国籍を有する満20歳以上」に
② 国民投票法の規定を準用するとした罰則規定を削除
③ 地方公務員法をはじめ、公務員の政治的行為を制限する規定を準用しない、とした条項を削除

 いずれも、都知事が反対の理由としたことであり、審査の過程で、反対会派から指摘された箇所。②については、国民投票法における妨害罪は懲役または禁錮7年。詐偽投票及び投票偽造、増減罪は懲役もしくは禁錮5年であるのに対し、地方自治法上、制定できる罰則は、懲役または禁錮2年以下となっていることから、法に抵触することが指摘されていた。③についても、地方公務員法には、地方公務員の政治的行為を制限する規定があり、それを条例によって解除することは、やはり法に抵触すると指摘されていた。

 一方で、①について、なぜ削除されてしまったのか。審査の過程では、賛成する複数の会派から、そもそも選挙権付与について、世界では満18歳がスタンダードとなっており、さらには全国で制定されている住民投票条例の3分の2が、永住外国人にその資格を付与している事実が異口同音に述べられた。原発事故が起きた時の影響は、そこに住む日本人にも外国人にも等しく襲いかかる。削除しなければならないほど大きな懸念が示されていただろうか。

 16歳であれば、原発事故が及ぼした重篤な被害について思考する能力は備えている。そして、原発の是非という、将来を左右する重大事については、より長く影響を受ける若者の意思が反映されるしくみとすることは合理的でもある。というより、次の世代を担う若者の意見を汲むことが必要不可欠なのだ。

 修正案を主導した民主党の議員によると、都民投票を実現する上で「必要な修正」を加えたというが、果たしてそうだろうか。削除の前に、理解を示さなかった同じ会派の議員や他会派に対して、十分な説明、説得をしたのかと問いたい。ここまでの修正を余儀なくされたというのなら、委員会で可否同数にまでこぎつけたその修正案をなぜ本会議で諮らなかったのかと問いたい。

  今、脱原発に向けた社会運動が大きく広がっている。こうした行動を未来につないでいくためには、若者の意思を置き去りにするなどあってはならない。