それでも住宅密集地でのスーパー堤防化が必要か?~区議会予算特別委員会土木費②

 利根川・江戸川河川整備計画原案に明記されたスーパー堤防施行エリアにつき、江戸川区内で、対象となる人口について質問しました。 

 担当課長の回答はやはり「わからない」とのこと。

 国交省といい、江戸川区といい、スーパー堤防と一体のまちづくり事業が遅々として進まない最大の問題点が、住民との合意形成の困難さにあることについて、まだ理解していないのでしょうか。しばらくしてから、前の担当課長が、「『江戸川区における気候変動に適応した治水対策検討委員会』の資料には確か9万人とあった」と補足答弁。しかしこれは、江戸川右岸のみならず荒川両岸のスーパー堤防、及び補助スーパー堤防の旧江戸川右岸、新中川両岸を含めた、つまり区内の河川すべてにおける対象人口であり、ここでの答弁としては大雑把すぎです。江戸川区だけでこれほどの方々に今後も影響を及ぼす事業であることが、公式の場で改めて確認されたものではありますが。

 今回の整備計画に住宅密集地における施行区域が記載されることで、どれほどの住民を巻き込むことになるのか。人口や世帯数を基礎データとして事前に把握するのは、当然のことではないでしょうか。影響を受けるのは地域住民。そしてその移転補償や買収交渉にまた骨を折るのは区職員の方々です。 

 本計画策定にあたり、関係自治体は、東京都を介して聞き取りを受け、それが反映されることになります。前回、策定を検討した際には、足立区、葛飾区、江戸川区が意見聴取を受けました。その際の意見は次のとおりですが、スーパー堤防推進を主張しているのは江戸川区のみです。 

【足立区】 洪水災害・地震水害等の発生防止のため、護岸整備・河道内の浚渫などの早期実施。区民にいこいの場を提供する河川整備の推進。支川の浄化施策支援。

【葛飾区】 河道掘削や堤防補強による浸透破堤対策の早期実現。人と川のふれあいの取り組み。

【江戸川区】高規格堤防の整備推進。浸透対策としての堤防強化。関宿水閘門の改廃。高水路改修。江戸川水閘門・行徳可動堰の早期改築、補修。緊急河川敷道路前面舗装化。ボランティア活動の推進。 

 スーパー堤防事業は2003年(「特に掲記を要すると認めた事項」として)と2012年(P83)、10年間で2度も会計検査院からさまざまな指摘を受けています。こうした指摘に対しては改善策を講じなければなりません。検査報告は、検査が済んだ決算とともに内閣に送付され、内閣から国会に提出されます。そして、国会で決算審査を行う場合の重要な資料になるもの。また、国民が国の予算執行の結果について知ることができる重要な報告文書でもあります。会計検査院では、改善された場合、その事実をきちんと公表していますが(たとえば官庁施設の耐震化についてはこのように)、スーパー堤防に関してはその事実が見当たりません。2011年は国会の要請に基づく検査であり、国会の予算委員会でも十分な議論が必要です。

 会計検査院や専門機関の調査により、制度の欠陥が次々と露呈する中、その改善策も示されないまま、本計画にスーパー堤防事業を盛り込むべきではありません。有識者会議で大いに議論していただきたいと思います。

 第10回利根川・江戸川有識者会議は、明日8日、午後1時~3時。TKP市ヶ谷カンファレンスセンターにて。傍聴は先着30名。詳細はこちらから。