新たな流域治水 vs 古き3点セット~利根川・江戸川有識者会議

2013年3月14日 23時49分 | カテゴリー: スーパー堤防, 八ツ場ダム

 前回の「利根川・江戸川有識者会議」では、関良基委員(拓殖大准教授)から、新しい視点による流域治水についての意見が披露されました。 

 委員は、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画」原案の4-3「河川環境の整備と保全に関する目標」(P44)を高く評価した上で、ダムに頼る点の治水ではなく、流域で展開する面の治水が重要との観点から、以下4点について提案されました。原案4-3には、「流域の自然環境、社会環境との調和を図りながら、河川空間における自然環境の保全と秩序ある利用の促進を目指す」とあります。 

①    【住宅に雨水浸透桝を設置する】降雨を地下に浸透させることで内水氾濫を抑制し、河川への流出も遅らせる。ピーク流量のカットにも寄与する。

②    【歩道・駐車場などへのウッドチップ舗装】コンクリートやアスファルトの被覆率を減らすことで内水氾濫を抑制し、ヒートアイランドを緩和する。既存インフラの質を高める事業であり、地域に永続的な雇用を創出。歩いても疲れにくい舗装であり、超高齢社会の安全と健康増進にも寄与。森林整備の促進にも。東京都羽村市の実証実験では、透水性に関し、アスファルトより10倍もの優位性が立証されている。

③    【水田の貯留機能の向上】降雨を一時的に水田に貯留し、河川への流出を抑制する「田んぼダム」を整備する。新潟県ではすでに2002年から始め、現在は9539haで取り組んでいる。排水溝を調整するのみで済み、極めて安価な水害対策。適切な実施を条件に水田所有者に所得補償をし、農業支援策にもなる。流域の環境保全にも。

④    【森林保水力の向上】森林が生長し、土壌が発達するほど貯留機能は高まり、洪水流量の低減に寄与する。放置された人工林の間伐を丁寧に行い、広葉樹の混ざった針広混交林に転換する森林整備をすすめることで、流域の保全機能を高め、土砂災害の発生リスクを低下させる。

  これらの実現のためには、国交省水管理・国土保全局だけでなく道路局、また、農水省、林野庁、地方公共団体との横断的な取り組みが必要、と語る若き委員の画期的な意見に対し、大御所、虫明功臣委員(東京大学名誉教授)から「田んぼダムなど大雨には効果なし」との意見が。「(争点の)17000tについては治水計画としては多少高くても支持する。できることをできる時にやっていくのが基本姿勢。河道整備・遊水地・ダム、これが3点セットだ」と、旧態依然の治水論へと議論は逆戻り、したかに思えましたが、関委員は「八ツ場ダムはたかだか300ha。一方、利根川流域の水田は何十万haにもなる。治水効果は圧倒的に水田が上回る。」と応酬しました。 

 国会より熱い有識者たちの白熱した論戦。次回は18日(月)、午後3時~5時、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターで開かれます。傍聴は先着30名。会場へはどうぞお早目に。

  関准教授は、交渉参加の行方が注目されるTPPについても、著書「自由貿易神話解体新書」で自由貿易のさまざまな弊害を示し、一石を投じています。