異例づくしの行政手続き~江戸川区スーパー堤防と一体の区画整理事業

仮換地指定通知→使用収益開始日通知→移転等照会通知→移転 

 これが土地区画整理事業における通常のプロセス。しかし、このたびの「仮換地指定通知」に始まる行政処分手続きは、スーパー堤防事業が前提のため、全住民の家屋などの一斉明け渡しが必要になることで、大きな違いを見せています。 

 「仮換地」(新しく指定された土地)については、そこが使える期日を示すことが一般的。インフラ整備や造成上の都合により、別途指定することもありますが、その場合でも多くは、従前地(今住んでいる土地)での土地利用を継続し、仮換地先の造成等が済んでから「使用収益開始日通知」を受け、移転するのが通常です。 

しかし、今回は、「従前地の宅地について使用し、または収益することができなくなる日」を12月16日とし、通知(7/16)の5か月先に設定する一方で、「仮換地」の使用収益日は別指定となっています。さらに、通知書面のフォームに着目すれば、効力発生日について、一般的には従前地と仮換地を示した表の欄外に注意書き程度に示されますが、今回は、その表の中に目立つように明示され、「使用収益できなくなる日」をことさら強調しています。通常はあくまでも、従前地の地番、面積や仮換地の街区・位置・面積を伝えるのが目的で、実際に明け渡しを求める期日には力点が置かれない書面のよう。こうした異例の対応は、確実な明け渡しをさせるという施行者(区)の強い意志の表れなのでしょう。 

 区画整理では、仮換地先の造成が済んでから、どうぞそこへ建物等を移転して下さい、という意味合いの「移転通知照会」がなされるのが通常です(移転は一度)。しかし、仮換地指定されたものの、そこが長期に使えない、しかも、従前地での工事が早期に行われる、といった場合、二度移転が必要に。まさに今回はこれにあたり、さらに、一斉の盛り土を行うため、「移転通知及び照会」ではなく「除却通知及び照会」となっていることも特徴的です。建物を移転させるのではなく、一斉に取り壊すことに主眼があるのです。そして、親から受け継ぎ、住み慣れた愛着のある自宅を自ら取り壊すことを要求されるのです。自ら行う旨回答しなかった場合、では、施行者が直接行いますよ(直接施行)、となり、強制執行されることに。 

 この「除却通知及び照会」の書面が、「仮換地指定通知」のわずか2週間後に届けられていることも異例の速さ。区画整理では家屋は動産扱い。まだ誰も見ることのない空間への換地。天空の?換地は異例づくし。