滋賀県流域治水条例案に「盛り土への配慮」条項~ダムやスーパー堤防に頼らない治水

2013年10月7日 00時40分 | カテゴリー: スーパー堤防, まちづくり

 9月6日、国土交通省九州地方整備局は長崎県の石木ダムの事業認可を告示。八ツ場ダム同様、治水・利水両面において不要なダム建設がまた進められようとしています。国が時代遅れのダム建設に依然執着する一方、地方では9月18日、「ダムに頼らない治水」に向けての条例案が滋賀県議会に上程されました。「滋賀県流域治水の推進に関する条例」です。 真の治水を行いたい嘉田由紀子知事が提出したもの。嘉田知事が2006年の当選直後から検討を重ねてきた看板政策であり、本格的な建築規制も盛り込まれ、これが成立すれば全国初となることが注目されています。 

 「流域治水」は、「どのような洪水にあっても、人命が失われることを避け(最優先)、生活再建が困難となる被害を避けることを目的として、自助・共助・公助が一体となって、川の中の対策に加えて川の外の対策を、総合的に進めていく治水」と定義。「川の中の対策」は「ながす」で関連法は河川法。「川の外の対策」は「ためる、とどめる、そなえる」で、都市計画法、建築基準法、水防法に関連。条例の主な内容は次のとおりです。

【浸水危険区域の指定(13条)】 200年に一度の割合で発生が予想される降雨における想定浸水深を踏まえ、著しい被害発生の恐れがあると認められる区域で、一定の建築物の建築制限をすべきものを指定。

【建築制限(14条)】 浸水危険区域内に社会福祉施設(高齢者・障害者・児童・母子など)、特別支援学校・幼稚園、病院・診療所・助産院を建築する建築主は知事の許可を受けなければならない。

【許可基準(15条)】 浸水危険区域内の新築や増改築は、想定水位以上の高さとなる居室や屋上を設ける。または同一の敷地内に同様の建築物がある。当該建築物の地盤面と想定水位との高低差は3m未満。主要構造物は鉄筋または鉄骨。木造建物は浮力で倒れる可能性があるとして水没部分は3m未満までに制限。付近に高さが想定水位以上の避難場所があるなど。

【盛土設置への配慮(25条)】氾濫原に道路、鉄道などの施設と相互に効用を兼ねる大規模な盛土構造物を設置する者は、周辺地域に浸水被害が生じないよう配慮する。県は被害を回避・軽減する措置を求めることができる。

【浸水時避難(28条)】避難場所や避難経路、家族との連絡方法など、とるべき行動の確認に努める。情報に留意し、的確に避難するように努める。

【売買情報提供(29条)】宅地建物取引業者は、浸水想定区域の情報提供に努める

【罰則(38条)】14条(建築制限)、16条(許可証交付)、17条(知事の許可)、などの違反は20万以下の罰金

【過料(40条)】19条(工程調査)、20条(工事廃止届)、21条(報告)、22条(立ち入り検査)などに関し、5万円以下の過料

 13条では、過去の浸水実績ではなく、県が開発した県全域の水害リスク予測地図により浸水危険区域を指定することが特徴。また、29条で、条例に盛り込んだ浸水危険区域を、建築基準法にいう災害危険区域に含め、宅地建物取引業者にその情報提供の努めを課す、としている点も特筆すべきポイントです。

 さらに注目すべきは、盛り土構造物の設置等に対する配慮を求める25条。東日本大震災では、仙台市などで、切り土と盛り土で明暗が分かれ、改めて盛り土の危険性が浮き彫りになりました。江戸川区と国がすすめようとしているスーパー堤防事業はまさにこの盛り土であり、係争中の取消訴訟でも、この危険性が争点のひとつ。本事業は堤防といいながら点の整備に過ぎず、今回の当該地区も江戸川延長に対してわずか1/1000です。つながらない以上、その両脇のエリアに危険地帯を生じさせることになり、効果への疑問が指摘されています。この25条は、盛り土が生む危険性を公式に認めた上で、その対策を求めたものと言えます。

 第25条 氾濫原において道路、鉄道その他の規則で定める施設と相互に効用を兼ねる大規模な盛 土構造物の設置、改変または撤去(以下「設置等」という。)をしようとする者は、当該盛土 構造物の設置等によりその周辺の地域において著しい浸水被害が生じないよう配慮しなければ ならない。

  2 知事は、前項の盛土構造物の設置等によりその周辺の地域において著しい浸水被害が生じる おそれがあると認めるときは、当該盛土構造物の設置等をしようとする者に対し、浸水被害を 回避し、または軽減するために必要な措置を講ずることを求めることができる。(下線は稲宮)

 雨水の河川への流出を抑制することなどを柱にした「総合治水条例」が、2009年に金沢市で、昨年には兵庫県で制定されていますが、建築規制に加え、盛り土の危険性を謳った条例もこれが初めてではないでしょうか。治水の最新条例にこの項目が盛り込まれたことは、盛り土がいかに公共の福祉に影響するかを今日的課題として明記した点で画期的です。 
 

 条例案には、河道拡幅や堤防設置など河川整備の推進の他、避難情報の提供や県民の防災意識向上などソフト対策も入っていますが、河川整備の具体策にダムを挙げていません。この点について、嘉田知事は、「ダムは自然環境や地域社会への影響が大きいことから最後の手段にした」と説明しています。

 浸水危険区域は、琵琶湖に注ぐ河川沿いを中心に8市町で計約20平方キロメートルを想定。県面積全体の0.5%に相当し、約1070戸の建物が対象となる予定だといいます。条例案が成立した場合、建築規制の対象となる浸水危険区域内で水害に強いまちづくりを進めるモデル地区を複数選定。住家のかさ上げや避難所確保などの具体的な協議を住民らと行うとし、そのモデル地区で課題を整理・検証をすることとしています。

  県議会や市長会には反対の声もある中、条例案は政策・土木交通常任委員会に付託され、10月11日に採決される予定です。