「一定の合意」がもたらす不幸~スーパー堤防と一体の土地区画整理事業

 公共事業改革市民会議116日、再々公開質問書を江戸川区に提出、その回答書2週間後の30日に出され、同市民会議のHPに掲載されています。 

質問「なぜ、地元住民との話し合いを進めることなく、1217日、催告書を突き付けるという強行手段をとったのか」

回答「除却通知処分という行政処分が履行されなかったので何らかの対応を取る必要があった。期限を定めて進める手続きは事業上いくつもあるが、これらを守っていくことは、すなわち説明してきた事業スケジュールを守っていくこと。おおむねのスケジュールは、懇談会やニュース配布を通してお知らせしてきた。そのような中、地域のみなさまと一定の合意は得られたものと判断し、除却通知等の手続きに入っている」 

「期限までに除却を完了しない場合は、区が除却工事を行う場合がある、とし、直接施行の執行もありうると強迫しているが、そのような場合、憲法が保障する基本的人権や財産権がどうなってしまうのかを憂慮せざるを得ない」との指摘には、「土地区画整理法に則った手続きであり、強迫していることや、憲法に抵触するという指摘には当たらない」

 同市民会議は、「直接施行は紙の上での手順としてはあっても、実際には多大な犠牲を伴うことであり、強行できるとは到底思われない。今回の除却強制問題は区内外に広く知られ、メディアも市民もその成り行きを見守っている。万が一、区が直接施行を執行することがあれば、江戸川区は世論の集中砲火を浴びることは必至だ。区は住民に対し、催告書を突き付けるのではなく、とことん話し合いを続ける姿勢を示さなければならない」と警鐘を鳴らしています。 

 一定の合意が得られたことをもってことを進めた結果、合意していない方々にも除却通知という行政処分がなされ、その方々の自宅を施行者である区が壊すことがありうる―。平穏に暮らしていた住民が、望まぬことで財産(自宅)を奪われ、その住民に最も近いところで行政サービスを行うはずの自治体がそのための強権力を発動してもいい―。土地区画整理法ができた時代に比べ、はるかに都市の成熟を見た今なお、ここまでの介入が認められていることに疑問を禁じえません。 

 なぜこのような不幸が起きるのか。ことを拙速に進める理由は常に施行者サイドの「一定の合意が得られた」との一方的な宣言によります。なぜ、「全員の合意」が得られるまで待てないのか。直接施行という最終的手法については、土地区画整理法77に明記されていますが、どこまで合意が得られたら事業をすすめてもいい、との基準は法令に明記されているものではないため、施行者のこうした解釈がまかり通ることになっているのが現状です。その基準をどうするのか、これを法に書き込むのは至難でしょうが、土地区画整理事業のように、私人を法的に拘束する拘束的計画においては、何らかの、それこそ一定のルールを定めることが検討されるべきでしょう。まして今回は、地元住民に有無をいわさぬ国の直轄事業・スーパー堤防事業との合体事業でもあり、不幸は2乗に。これも法が想定していないことなのでは? そもそも、区画整理やスーパー堤防事業そのもののあり方も検討が必要です。 

 やはりスーパー堤防と一体でなされた平井7丁目地区では、直接施行を行うことがある、との書面も送付されずに事業がすすめられ、通常の区画整理も含め、江戸川区が直接施行に及んだことは過去一度もありません。

 12月17日付け催告書に定められた期限1月31日が過ぎ、2月3日には「建築物等の除却について」との区長名による文書が、除却をしていない10軒の権利者に届けられました。これは催告書ではないとのことで、次の期限日も明記されていませんが、内容は「一日も早い除却への協力」を求めており、受け取りを拒否した方もいます。

 北小岩1丁目地区においても、当初からの説明どおり、最後の一人まで合意を図ることが必要でしょう。たとえ国と決めたスケジュールが守れなくても、まずは住民との約束を守ることです。

 2月7日、吉良よし子参議院議員が、本件について参議院総務委員会で質問されました。新藤総務大臣、望月技術審議官が誠実な答弁をされています。参議院のHPで映像を見ることができます(1時間21分頃から10分間)。