スーパー堤防事業で比較・日米の環境アセス~エコスタディ報告②

2014年3月27日 16時56分 | カテゴリー: スーパー堤防

 「社会影響評価」の観点も、アメリカの環境アセスにあって、日本にないもの。

 アメリカでは、行政機関の計画策定や意思決定者は、その政策、計画、事業がもたらす社会的影響をより理解する必要がある、とされています。1992年には社会科学者が、異なる組織間で委員会を構成し、「国家環境政策法(NEPA)」で求められる義務を官民の機関や組織が果たせるよう、その支援を目的として、「社会影響評価の原則とガイドライン」を策定しました。 

主な内容は次のとおりです。

  • 利害関係者を特定し、地域特性に関する基本情報をまとめる
  • 社会的問題や文化的問題を特定し、人間環境に注目する
  • 意思決定に役立てる良質な情報を提供する
  • 調査方法、データ分析において、弱者であるステークホルダーや住民が考慮されていることを確認する
  • 評価及び監視と低減措置を実施する(不足データがあれば補足する計画を立てる、など) 

 社会影響評価項目としては、次のようなものがあります。

・人口 ・コミュニティの構成 ・コミュニティ及び家族の変化 ・地域資源など 

 日本の場合、環境アセスが行われるのは「事業実施にあたり」(法第1条)であり、計画段階の環境配慮(第3条の2)が追加されてはいますが、それも実施する「位置や規模」が決まった段階です。これに対し、「NEPA」では、「可能な限り検討段階で」「政策決定に間に合う十分に早期段階で」とされ、「すでに行われた決定を正当化するために使ってはならない」とも。これに照らせば、昨年5月の、国交省関東地方整備局による「江戸川高規格堤防整備事業」再評価  は、現地での住民合意や火災消火活動などについて、事実と異なる表記までして正当化を図ったものであり、あり得ないハナシ、となります。 

 では、日本は全くいいところがないのか、と言えばそうでもないといいます。 

 日本は、ODA(政府開発援助)において、「環境社会配慮ガイドライン」を設け、途上国開発にあたり、「社会的合意」「非自発的住民移転」などを定めているのです。 

 たとえば、「社会的合意」については、「早期段階から情報を公開し、地域住民と十分な協議を経て、その結果がプロジェクトに反映されていること」「女性、子ども、老人、貧困層など社会的弱者については、さまざまな環境影響や社会影響を受けやすい一方で、意思決定プロセスへのアクセスが弱いことに留意し、適切な配慮がなされなければならない」。 

 「非自発的住民移転」については、「非自発的住民移転及び生計手段の喪失は、あらゆる方法を検討して回避に努めなければならない。回避が可能でない場合は、影響を最小化し、損失を補償するため、対象者との合意の上、実効性ある対策が講じられなければならない」。 

 人々が暮らし、コミュニティが形成されていた土地での事業であれば、日本は途上国に対し、上記の環境社会配慮を求め、これがクリアされなければ事業着手はできないしくみになっています。 

 北小岩1丁目東部地区には255名の方々が生活を営んでいました。途上国に求める環境社会配慮が、肝心の日本でなされていない反省に立たなければなりません。