事業計画変更なき仮換地処分は違法~「江戸川区スーパー堤防仮換地処分取消訴訟」第一回口頭弁論②

 高橋原告の陳述のあと、原告団長・小島延夫弁護士は、東電跡地の件について「金利負担を理由に民間事業者は盛り土を行わないことになった。一方、北小岩では、住民たちが自宅の取り壊し・立ち退き、3年以上の仮住まい、盛り土や傾斜地での生活の不安など、他の事業には見られない、さまざまな負担や被害を負っている。わずか金利の負担だけの問題に対し、明らかにバランスを失している」とし、ただちに通常の区画整理事業に戻すことが求められました。 

 そして、仮換地処分の取り消しを求める実質的問題点を①河川区域になり、地権者らの土地に重大な権利利益の制約が発生することになる以上、事業計画の変更手続きが必要②盛り土の安全性確保という点からも、事業計画の変更の手続が必要 とし、それぞれ次のように主張を展開されました。

①憲法31条は、人の権利義務に重大な制約を生じさせる場合、事前にその制約の内容を告知し、意見を聴取する手続が必要だとしている。土地区画整理事業の場合、そうした手続は、事業計画の決定及びその変更の手続の前に保障されているだけである。であれば、河川区域により、重大な権利義務の変更をする以上、意見聴取が可能な、事業計画の変更の手続がとられるべきであり、その手続がない限り、新しい制約を前提とする仮換地処分等は、前提となる事業計画を欠き、違法である。 

2009811日、静岡県中西部地震において、東名高速道路では40mの崩落事故が起きた。この地震の規模は、想定する東海地震の200分の1であり、阪神淡路大震災よりはるかに小さいものであった。そもそも、東名高速道路は、阪神淡路大震災以降、同規模の地震に耐えられるよう耐震補強を進めており、崩落事故は起きないはずであった。盛り土は計算で耐震性を求めるのが難しいこと、土中に水分含有量が多くなることによって耐震性が低くなることなどがこの事故の原因として挙げられている。国が安全性を十分考慮して対策を講じていたものであっても、盛り土部分であるがゆえに、崩落事故が起きた。このように、盛り土には危険性の問題があり、この盛り土の上に住居をつくるということは、ただちに人の生命・身体に関わる問題である。その盛り土は昨年5月の基本協定締結により、国が行うことになった。もともと単独で行うとしていた区は、事業計画決定の段階では盛り土の検討はしないとしていた。しかし盛り土の実施主体が変更となった以上、区がその安全性をチェックする機会が必要である。盛り土の安全確保の方法について、事前に案を住民に示し、住民や複数の専門家を通じた議論を経る必要がある。盛り土の安全性について、検討議論する機会が、事業計画の変更の手続の中で持たれるべきである。

 谷口裁判長は、今後の裁判について、原告から主張の補充、被告の答弁書への反論がなされることを確認。被告に対しては、原告らが区に突き返した仮換地指定通知の提出を求めました。書面は6月12日までに提出されることとなり、次回期日は、6月20日(金)午後1時30分より、803号法廷で行われます。

  3人の裁判官のうち、右陪審が横田典子裁判官に代わりました。「事業計画取消訴訟」判決には関わられていない唯一の方。これまで司法の場で判断されてこなかった重要な事実に目を向けていただき、この争点に対峙されることが期待されます。