「合理性を欠く」判決~スーパー堤防取消訴訟控訴審判決

「本件控訴をいずれも棄却する。

 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 事実及び理由の朗読は省略する。」 

  10月2日、奥田隆文裁判長から言い渡された判決は、原審と異なり、3行目があるので、時間にして約10秒。開廷前のカメラ撮影時間よりずっと短い、との声も。しかし、傍聴者もこの3年間、「司法」というものの現実を目の当たりにしてきた分、この不当判決を外形上、淡々と受け止めているようにも見受けられました。 

 もうひとつ、原審と違うところが。それは、高規格(スーパー)堤防事業との関連性に触れたこと。

 「国による本件地区の高規格堤防事業の実施をも踏まえて、本件事業計画を決定していることは明らか」というくだりですが、結果、しかしこれは「合理性を欠くものとはいえない」のだと。 

 「高規格堤防事業の必要性」が被控訴人の裁量権行使の「基礎とされた重要な事実」であるが、本件地区に高規格堤防を整備する必要はない、との主張に対しては、「被控訴人は同事業の実施やその内容の変更を決定することができる法的根拠や地位を有するものではない」。高規格堤防事業実施の判断は、区がするのではなく、国がするものであり、区が考慮しなくても違法ではない、と。 

 盛り土を伴う区画整理の必要性については、「公共の福祉の増進に資することを目的としていることから、施行区域内の住民の共通の利益の実現に尽きるものではなく、これを含む公益の実現にあるというべき」で、「合理性を欠くものとはいえない」。 

 その一方で、住民負担については「控訴人の主張のとおり」とし、「住みなれた土地から一時的にせよ移転を余儀なくされ、事業完成後に再移転するにしても、2度の転居を強いられることになり、住民に小さくない負担をかけることは容易に予想されるところであり、特に高齢者についてはその負担感がさらに大きいものと考えられる」。しかしこれは「先行取得を実施することで負担軽減策を講じている」ため、「合理性を欠くものとはいえない」。

 住み慣れた土地から「一時的移転」どころか、先行買収により、出ていけばいい、と。それが公益の実現か? これをまちづくりと言うのか? 権力の濫用以外の何物でもないのでは? 土地区画整理もスーパー堤防も、買収を前提とせず、新しくつくり直されたところに戻ることが基本。結局、原審と同じく、制度の趣旨とは余りにも乖離した判断に。机上でつくられた制度の理屈だけを重んじ、問題山積の治水事業の現状や、生活の現場を省みない人たちが判断するからこうなる。全く合理性を欠いている。 

 原告団・弁護団は、近々、上告の方針。これに加え、法に基づく事業計画変更の決定を行うことなく、江戸川区と国が強引に実施しようとしているスーパー堤防事業について、国を被告とするスーパー堤防事業差し止め訴訟、そして、国及び江戸川区を相手取り、損害賠償を求める国賠訴訟を新たに提起すると、判決後の記者会見及び報告集会で発表しました。いよいよ本丸のスーパー堤防事業そのものの是非を真正面から問うことに。闘いは続きます。

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