「選挙の時だけ自由で、あとは奴隷」にならないために

   昨今、国政でも地方政治でも「選挙で選ばれた」=「民意」との考えを振りかざし、強引に施策を実行しようとする動きが強まっています。 

 世界的には、首長が直接選挙されない自治体は決して少なくなく、議長が自治体の代表を兼ねているといいます。しかし、議会がない自治体はありません。執行機関である首長に何を執行させるのか、それを決めている議会こそが住民自治の根幹。 

 統一地方選挙が始まっています。独任制の首長の選挙に注目が集まりがちですが、条例、予算、重要な計画、市町村合併、契約、財産の取得・処分など、自治体の重要事項はすべて議会が決定しています。住民代表機関であり、議事機関である議会に権限が集約されながら、その機能は十分果たされているでしょうか? 

 昨年の「日経グローカル」の議会改革ランキングにおいて、江戸川区議会は都内最低の49位との結果に。(全国741位)。 

 江戸川区議会では、「議会改革」というと、議員定数の削減がお決まりのようになされてきました。区の有権者数53万4千人に対し、法定の上限数56より、23区で最大、12の定数削減を行ってきており、現在定数44(同規模の有権者数の足立区の定数は45、同57万人の練馬は50、同39万4千人の江東区は44)。しかし、定数削減だけがすすむことには違和感を覚えずにいられません。 

 議員定数は、議会のあり方、運営そのものを表すもの。どういう自治をつくっていくか、という問題につながります。首長の追認機関に甘んじ、役に立たない、何をしているかわからないなど、市民に尊敬されない議会では、議員が多すぎる、議会不要、という意見は当然出るでしょう。しかし、定数を削減するとしても、その前提に「どういう議会であるべきか」という議論が不可欠です。自治の根幹に関わる重要な問題としての議論もなしに、定数だけを削減することが「議会改革」であるはずがありません。「行政改革」は効率性重視ですが、「議会改革」とは地域民主主義を実現することです。まずは住民の声をどのように政治の場に取り入れていくか、その改革こそ必要です。 

 しかし、行政への市民参加に対し、議会への市民参加は遅れているのが現状です。合議体である議会の権能からしても、議会にこそ市民参加が保障されなければなりません。江戸川区議会では、陳情者が議会で趣旨説明する機会もありません。議事機関といいながら、執行機関と質疑するだけで、議員間で討議することもありません。何かといえば、会派・個人で議会を分断するような運営がなされますが、それでは首長の思うツボでは? 会派を超え、ひとつのまとまりとしての議会活動をしてこそ、議会の本来の機能が発揮できるというものです。

 選挙は極めて重要な政治参加の機会ですが、民意反映はそれだけにあらず。選挙後の市民参加が保障されてはじめて、その後も「奴隷」にならずにいられます。タイトルは、ジャン・ジャック・ルソーの言葉。

 今月26日に執行される統一地方選挙に向けて、選挙が実施される都内21区の選挙管理委員会が共同で啓発動画を作成しています。初の試み。こちらからどうぞ。まずは、投票をして住民代表にふさわしい人を選ばないと。