滋賀の流域治水に学べ~地方から変える治水

2015年12月13日 23時14分 | カテゴリー: スーパー堤防, まちづくり

  鬼怒川での甚大な洪水被害などを受け、ダムという機能に頼る従来の治水政策の限界も明らかになってきています。嘉田由紀子さんが滋賀県知事時代に8年の歳月を費やしてまとめた滋賀方式の流域治水の意義を改めて学ぶ機会を得ました。6日(日)に行われた、環境経済・政策学会設立20周年記念「温暖化時代の治水政策~国と地方の取り組みから」に参加しました。

 嘉田さんは、水害時に人命被害が生じる要因として、①危険個所での無防備な市街化 ②水防活動、避難行動の遅れ・限界 ③河川整備の遅れ・限界 の3つをあげ、その対策としては、①堤防強化・河川掘削 ②土地利用・建築規制 ③地域防災力向上 をあげられました。

 琵琶湖をはじめ、日本や世界の湖沼に関わる環境社会学研究者であった嘉田さんが、その果実をどれほど多くの書物にしたところで、「審議会さえ変えられない」。そこで、6つのダム計画の凍結・中止と、代替案としての「ダムだけに頼らない流域治水」を掲げて知事となり、日本で初めての流域治水条例制定にこぎつけました。川の中だけに水を閉じ込めることは不可能である現実に目を向け、「河川法における河川管理者の責務の明確化」「雨水貯留浸透機能の確保」「災害をやり過ごす知恵の伝承」「特性に応じた土地利用」といった、地方から国の事業に働きかけたり、人づくりやまちづくりの視点も重要な要素になっています。

 欧米では、水害リスク開示によるハード・ソフトを総合化した流域治水政策が当然のように実施されていますが、家を建てるにあたり、その土地の水害リスクを知りたいのはいずこも同じ。県として「地先の安全度マップ」をつくり、公開の段になったとき、「市民の心配をいたずらにあおるだけ」などと大きな反対が。日本では土地所有者の利益代表の政治力が強く、未来の住民である子どもたちや福祉施設をつくる事業者らを代表する政治母体が弱いという現実も浮かび上がりました。さらに、浸水の原因は国が管理する大河川、市町村が管理する小河川、農業用水路、下水道など、所管が異なる領域があることも総合的な治水を阻む大きな課題として横たわります。

 嘉田さんが何度もおっしゃったことは「ここに横串をさすのが自治体のしごと」ということ。

 さて、第4回区議会定例会では、本西みつえ議員が「流域自治体が考えるべき河川行政について」一般質問しました。答弁では、荒川や江戸川、新中川という一級河川を抱える自治体でありながら、治水政策をわがことととらえていない江戸川区の実態が明らかになりました。区内の堤防整備率すら知らず、自治体が河川行政に関わるのは不可能、と。 

   昭和30年代までは洪水後、流域住民が自費で補修を行い、「水」は近くにあり、まさにわがことでした。それがすべて公費支弁となり、行政依存度が高まることで「水」が遠くなり、人・地域側の弱さもまた高まることに。行き過ぎた「遠い水」を反省し、今、「近い水」の再生・創生が求められています。それは、当該住民にもたらされる過大な負担を省みないダムやスーパー堤防のような、人間不在の技術論から、人間重視の治水へと回帰させることに他なりません。「災害対応は、伝来の相地の学を尊重すべし」(寺田寅彦)。

 流域自治体として、まずは滋賀県の取り組みに学びましょう。

*このシンポジウムについては、ジャーナリスト・まさのあつこさん が詳しくリポートされています。こちらから。