鬼怒川決壊に学ぶ~本当に安全な堤防とは⑤耐越水堤防の導入を

2016年5月22日 11時22分 | カテゴリー: スーパー堤防

元東京都環境科学研究員。都職員のかたわら、「東京の水を考える会」「水源開発問題全国連絡会」など、市民生活を守る立場から、市民運動にも精力的に取り組む。行政が市民に知らせようとしない情報の開示、国交省との直接対話などを実施。スーパー堤防や八ツ場ダム裁判では意見書の提出もされている。

元東京都環境科学研究員。都職員のかたわら、「東京の水を考える会」「水源開発問題全国連絡会」など、市民生活を守る立場から、市民運動にも精力的に取り組む。行政が市民に知らせようとしない情報の開示、国交省との直接対話などを実施。スーパー堤防や八ツ場ダム裁判では意見書の提出もされている。

ダム行政からの転換を訴え続けてきた水問題研究家・嶋津暉之さん(写真)は、4月9日(土)の第3回江戸川防災勉強会において、昨年9月の鬼怒川決壊の事実に基づき、その重要性を具体に解き明かされました。

鬼怒川上流には、五十里ダム、川俣ダム、川治ダム、湯西川ダムと4つものダムがありながら、すさまじい被害が起きた。これら4ダムの治水容量は1億2530万㎥。集水面積は鬼怒川流域全体の1/3を占めており、ダムで洪水調節を行えば氾濫を防げる、とされてきた川だった。しかし、ダムでは流域住民の安全が守れないことが改めて露呈した。

しかも、4つめの湯西川ダムは、建設費1840億円をかけ、2012年に完成したばかり。一方、ダム偏重のあおりで、河道整備はなおざりにされてきた。国交省の資料で鬼怒川の流下能力を点検すると、下流部は流下能力が大幅に不足していることは明白。その問題を、栃木県が関わる3つのダム建設の公金支出差止訴訟で、2008年、指摘した。

「鬼怒川中流部はほとんどのところですでに十分な流下能力を有しているのに対して、下流部は状況ががらりと変わる。必要な流下能力を大幅に下回っている区間が多く、河道整備が非常に遅れている状況にある。巨額の河川予算が投じられている湯西川ダム事業を中止し、その予算で鬼怒川下流部の河道整備をすみやかに進めるべきである。」

こうした状況を放置してきた以上、起こるべくして起きた堤防決壊であったと言える。

なぜ、まっとうな治水対策がすすめられないのか。それは、かつてはダム重視、そして現在はスーパー堤防事業があるから。国は、予算規模の大きい事業をすすめたいようである。

しかし、スーパー堤防整備は、江戸川に限っても、20年以上をかけて、2.3%の整備率。河川整備計画にある22kmの区間整備には870年かかることになる。鬼怒川決壊を省みれば、堤防強化は急務でありながら、これでは流域住民の生活の安全と財産は守れない。そもそも、人々が住んでいるところに堤防をつくっていく、しかも、まちづくりがないとできない、という手法自体が間違っているのである。

スーパー堤防計画を見直し、耐越水堤防を速やかに導入すべきである。

当日スライドの一部はこちら。江戸川では、治水において、北小岩、篠崎より優先すべき箇所があることは一目瞭然。

 戸川下流域では、北小岩1丁目に続き、篠崎地区でもスーパー堤防事業がすすめられようとしていますが、関連する道路事業では、堤防の下にボックスカルバートを通すため、また基本断面を確保できない不完全なスーパー堤防が増えることに。

常総市から参加された、水害被害者の会の方は「私たちが犠牲になったことで、鬼怒川改修が始まった。犠牲が出ないと動かない、人柱(ひとばしら)行政だ。被害者への行政の支援は足りない。スーパー堤防とともに、住民をだますような国交省の河川行政には怒りを禁じえない」と訴えられました。