東京都、情報公開対象縮小の解釈変更を回避

2016年12月8日 16時58分 | カテゴリー: 情報

江戸川区の情報公開条例改正が大きく報じられた一方、東京都が情報公開条例の条文解釈を変更しようと協議していたことはあまり知られていません。こちらは結果、変更しないことに決着していますが。

東京都情報公開条例には、以下のとおり、「他の制度等との調整」(第18条)が明記されています。

<実施機関は、法令又は他の条例の規定による閲覧若しくは縦覧又は謄本、抄本その他の写しの交付の対象となる公文書(*注記略)については、公文書の開示をしないものとする。>

この条文の解釈により、これまで開示対象としてきた訴訟記録や、登記簿から転記して作成した文書を開示対象からはずすことについて、東京都情報公開・個人情報保護審議会では、2015年9月16年3月、2度にわたり協議していました。この動きは、情報公開の範囲を縮小する点において、制度の根幹を脅かす重大問題をはらむものでしたが、あくまでも解釈変更であるため、都議会に諮られることもなく、一般にはさほど知られることなく進んできた経緯があります。

現状、都は「今後も従前どおり変わりない」と判断することに。
この背景には、都の情報公開制度運用に関して提起された訴訟において、一審、控訴審とも敗訴となり、上告していたところ、本年7月、最高裁にて都の敗訴が確定したことが大きく作用したと思料されます。

本訴訟は、都主税局の訴訟記録についてなされた開示請求に対し、都は被覆処理を行いましたが、裁判所では、訴訟記録は被覆処理せず開示されていることから、都の対応が問われたものでした。

これまで、訴訟記録は判決文も含めて情報の内容、性質に応じて部分公開とする解釈運用が多く見られますが、一方で、民事訴訟法が訴訟記録について「何人」にも閲覧請求を認めている(91条)ことから、これをもって公表情報として扱い、全部公開としている自治体もあるなど、判断が分かれていました。

民事裁判及び行政裁判記録は裁判所において閲覧等公開されていますが、閲覧は通常、訴訟に係る事件番号などが求められ、「何人」もが請求することは事実上困難な状況にあります。

NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子さんは、「各地の情報公開条例で訴訟記録を請求対象外とする規定を設けているもの、あるいは運用で適用除外としている例は承知していない」とし、「都が訴訟記録等を対象外とした場合の自治体への影響は大きい」と警鐘を鳴らしていました。訴訟記録の情報公開制度上の扱いについては請求対象とすることで解釈運用は定着しており、それを覆すような解釈変更は、「少なくとも慎重でかつ開かれた議論と合意形成が必要であり、それなしの変更は手続的にも妥当性を欠くものと言わざるを得ない」ことから、今回の都の動きに対し問題点を指摘、意見書を出されていました。(以下、「訴訟記録」について抜粋)

・都を当事者とする訴訟記録は都政の説明責任を果たすために必要なもの。解釈変更により対象から除外することは恣意的な解釈変更であり、条例の規定及び解釈運用の透明性、公正性から逸脱している。
・公的機関の情報の公開・非公開は、原則公開を前提に、情報の内容・性質、状態によって個別にされるべきものであり、非公開の判断は最終的には裁判所の判断にゆだねられることになり、都を当事者とする訴訟記録も同様に扱われるべき。都として意図しない公開がなされないよう、公開請求できる範囲を解釈によって変化させることは、司法の役割を軽視し行政の判断を絶対的なものとして位置づけることに他ならず、基本的な法秩序からも逸脱している。
・民事訴訟法にいう訴訟記録とは、裁判所において編纂された保有されている記録であり、都が保有する訴訟記録を対象としたものではない。加えて、都が保有する訴訟記録には、裁判所に提出した各種書面だけでなく、訴訟遂行に必要なさまざまな内部文書や関係文書を含むものである。都としての説明責任を果たすためには、都として編纂、管理している「訴訟記録」を情報公開請求対象とすることで、民訴法の規定とは別に情報公開の機会を保障することが必要。
・民訴法は訴訟記録の閲覧について、事件番号の提示を基本としているため、事実上の制約があると理解されるべき。裁判所では都を当事者とする訴訟記録も同様に扱われるため、条例18 条1 項を適用して請求対象外とした場合、事件番号を明らかにしなければ、住民訴訟や情報公開訴訟のようなケースも含めて、判決を含む訴訟記録へのアクセスを事実上遮断することになる。そのため、そもそも一律に条例の適用から除外することは、都政に対する都民の不信感を増長するだけである。

三木さんの意見書本文はこちらからどうぞ。