具体性なき判示~江戸川区スーパー堤防差止訴訟不当判決③

2017年2月1日 23時52分 | カテゴリー: スーパー堤防, スーパー堤防裁判

現状、目標流量に対する流下能力に十二分の余裕高があることがわかっている江戸川の現地。広大な河川敷を持つ通常堤防についても、連綿と強化策が打たれ、直近では緩傾斜堤防工事もなされています。「そもそもこの上、超過洪水対策のスーパー堤防が必要か。なぜここで行う必要があるのか」。

判決は「洪水は自然現象。超過洪水が発生する可能性自体は存在し、超過洪水で破堤すること自体は否定し難いと言わざるを得ない」。地域性や流量については何も触れることのない大雑把な理屈。

また、「スーパー堤防はおよそ完成可能性がなく、全体がつながらないと効果がない」との主張については、「一部分でもつくれば当該箇所は破堤しなくなるという効果は生じるのであり、その点において治水効果がある」と。しかし、それはどう実証されているのか。

昨年10月、常総市水害1周年院内集会で、「フロンティア堤防」「アーマーレビー」についての実例を報告された国交省治水課の担当者に、それらの堤防の評価をお聞きしたところ、「越水したとき(破堤にいたる)時間をかせぐことができ、全国的にやってきた(北海道、秋田、茨城、新潟、三重、兵庫、広島、福岡、計9河川で実施)。施行20年になるが、越水はどこも起きていない。越水が発生すれば想定効果はあるだろう」。超過洪水が起きていない中、スーパー堤防の効果は希望的観測に過ぎません。

さらに判決は「当該敷地は水防活動や避難場所として整備することで、防災力向上の効果が期待される」とも。破堤の可能性があると認めたところを避難場所として活用するなど、矛盾も甚だしい。

「より優先されるべき治水対策がある」との主張については、「他に行うべき対策があるにしても、スーパー堤防は相応に優先されるべきものであり、にわかに原告らが指摘する治水対策を優先すべきものと認めることはできない」と、極めて雑駁な判示。

どれもこれも、それこそ、盛り土の危険性を訴える原告に対し自ら投げかけた「一般的、抽象的」な域を出ていません。

裁判はとかく判決の結果だけが取り上げられますが、内実はこの次元。その説明に苦慮する行政マンとかわりばえしません。理とことばの力に基づいて法の支配を貫徹し、国民の権利・自由を実現する役割はどこへ?

前回ご紹介した報告書の中で、会計検査院は「暫定完成や事業中でも整備率に算定しているのはスーパー堤防事業のみ。暫定完成や事業中においては破堤しないという効果は発現しない」とし、情報開示請求により入手した、財団法人リバーフロント整備センターによる「高規格堤防に関する整備手法検討業務報告書」(2011年3月)には、「散発的な整備のままでは、大都市において壊滅的被害の防止という、もともと期待されている効果は発揮できない」と明記されています。

さて、先行買収により土地を買い過ぎた江戸川区は、通常画地につき、昨年、地区内権利者を対象に売却を試みましたが、買い手がつかず、今度は一般競争入札による売り払いを公表。こちらから。

また、千葉街道に面する1357㎡の大規模画地については、公募提案型による土地の売却もしくは貸付けに踏み切ることに。売却不成立も想定しての募集。スーパー堤防になれば、安全が増し、資産価値が上がるとされていますから、従前であれば、こんな想定は「想定外」だったでしょう。こちらから。

区や裁判所が言う「住民のために用意された用地先行取得」は、住民に苦渋の選択と負担を負わせたばかりか、区もまた予期せぬ負担を負う事態となっています。