住民置き去りの検討会に意味はあるか?~国交省「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」

国土交通省は5月18日(木)、「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」を開催しました。2011年8月、「高規格堤防の見直しに関する検討会」が「高規格堤防整備の抜本的見直しについて」にとりまとめた課題に対し、スーパー堤防整備を推進するための方策を検討するためだそう。

この検討会は公開で行われたものの、案内は5月16日(火)の夕方、HPにアップされ、申し込み締め切りは翌17日(水)午後2時。これでは一般市民は申し込むどころか、知るいとまもありません。

メンバーは学識者のみ。「水防意識社会の再構築」「賢く投資、賢く使う」なども謳っていますが、その前に、スーパー堤防事業開始以来30年近く経って初めて発覚した地盤強度不足という基本的な欠陥への対応をまずは十分検討していただかないと。

折しも11日(木)に開かれた北小岩での地権者への説明会では、全体75区画のうち26区画で行う対策工法を、それまで説明していた「置換工法」から「中層混合処理工法(表層は置換工法)」に変更するとしたことに対し、参加者からは「信用できない。大学の先生など、国交省ではない第三者の専門家のお墨付きがないと」との意見があったばかり。

この工法は、改良剤を霧状に吐出しながら貫入撹拌し、土と改良材を混合撹拌するというもの。小規模な仮設備で施工可能、擁壁等の撤去が最小限ですむ、工期が短い、砂質土・粘性土に適している、などの長所があると言い、「天候に左右されず、早い引き渡しが可能になるため、12月としていた引き渡し時期が9月に早まる」との説明には、地盤強度不足とされた地権者から「安全より期限ありきではないのか」との疑問が出され、「前の対策工の方がまだいい。この説明で決定してもらっては困る」との意見が。「部分的に行うことで、また強度に差が出るのでは」との声も。「何とかこの工法でやらせて下さい!」と国は最後のお願いをするも、説明会は「時間切れ」で、合意に至ることなく散会となりました。

その一方、国の検討会では、山田水管理・国土保全局長が「想定を超えた水害に対する究極の切り札がスーパー堤防」と言い、座長の宮村関東学院大名誉教授は、施工がペースダウンしていることについて「もうほっとけない。選定した120kmについては河川行政が主導して積極的に広報すべき」と。

当該地では相次ぐトラブルで、地権者の生活再建は「想定を超えて」なかなかかなわない。その元凶であるスーパー堤防事業の根本問題を直視することなく、事業に翻弄される住民を置き去りにしたまま、学識者だけが別次元の検討をしても何の解決にもならないでしょう。机上ではなく、まず、現地の実態にこそ目を向けるべき。そして、堤防の上に人を住まわせることは果たして適切なのか―。ここからスタートしてもらわないと。前回も今回も欠落しているのは住民の視点です。