被害の実状や人々の苦しみを直視せよ~江戸川区スーパー堤防差止訴訟控訴審第1回口頭弁論②

2017年5月27日 01時52分 | カテゴリー: スーパー堤防裁判

小島延夫弁護団長は冒頭「2度の移転と長期間の仮住まいが強制されることによる侵害」について、原判決の重大な誤りを指摘されました。

本件区画整理は、区画整理事業の原則の形態である「直接移転」ではなく、土地区画整理法99条2項に謳う「特別の事情」があるときに例外的に認められる「中断移転」という形態であることを全く考慮していない という点について。(この2つの移転内容の違いはこちらから)

「中断移転」の結果、当該住民は長く住み慣れた住宅を自ら取り壊し、地区外での仮住まいのための移転を強いられ、さらに当地に戻る移転と、2度の移転を余儀なくされていますが、これは原則形態ではありえない著しい不利益です。そしてこの形態でなくてはならない理由は、スーパー堤防整備があるから。これにより、控訴人やその家族が被った深刻な被害が改めて語られ、通常の区画整理による権利の変動を超える重大な権利の制約がスーパー堤防事業によってもたらされていることを無視、軽視する原判決には著しい判断の過誤があるとの指摘がなされました。

一方で、原判決は、2度の移転を回避する方法として「先行取得に応じる方法がある」としつつ、地域コミュニティの崩壊については「当該住民が先行取得に応じる選択をした結果生じたこと」としました。住民にしてみれば、2度の移転と仮住居での居住による多大な負担か、地域コミュニティの崩壊か、どちらかは避けられない状況を生んでいることについて、「では住民はどうしたらいいというのか原判決の論理は矛盾し、破たんしている」と主張。

さらに、本地域は60歳以上が41.17%を占め、転居による被害、特に高齢者にとっての被害には、身体的・経済的資源および人間関係における資源の低下、また、新生活の場への適応の困難性など、ストレスの多い危険な状態になることが具体に述べられました。2012年12月、高齢男性が自宅の火災により亡くなった事件は、本件事業をきっかけに地域社会との交流が閉ざされたことが要因となっていることも語られ、原判決においては、こうした事象が見過ごされている問題点も指摘されました。(当時の火災についてはこちらから)

そして、裁判所は少なくとも被害の実状や人々の苦しみを直視し、その上で判断をすべきである、と述べられました。