法的権限、正当な判断を~江戸川区スーパー堤防差止訴訟控訴審第1回口頭弁論⑤

2017年6月7日 15時18分 | カテゴリー: スーパー堤防裁判

最後に、福田健治代理人が国の法的権限について陳述されました。

住民は土地区画整理事業の仮換地指定処分の制度の中で、一斉に立ち退かされました。仮換地指定処分は、あくまでも区画整理を実現するため、区画整理の施行者に認められた権限です。これを明文で定めたのが同法80条であり、仮換地指定後、使用収益をする者がいなくなった土地について、「区画整理の施行者又はその命じた者もしくは委任した者」が、同意を得ることなく、「区画整理事業の工事」を行うことができる、と定めています。よって、原告団は、当地で可能なのは、江戸川区の行う土地区画整理事業のみであり、別の主体がスーパー堤防工事を行なうことはできないことを一審から主張してきました。

これに対し、原判決は「区画整理の施行者である江戸川区が、国に対し、同法100条の2の管理権限に基づき、スーパー堤防のため盛土工事を行なわせる権限を有する」と判示。100条の2の「管理」には、区画整理の目的に沿って区画整理の施行に必要な範囲において行う土地の保存、利用、改良等の権限が包含され、事業計画の実現に必要である限り、第三者に各種事業を行わせることも含まれるのであり、本件盛り土工事も許容される、としたのです。

福田代理人は、同法80条は工事権限の範囲を、100条の2は管理権限を明示しているのであり、工事権限は80条が規律すると判断するのが妥当とし、原判決の解釈が成り立たないことを、以下の論点から改めて主張されました。

①文言解釈として、「管理」とは、物事の性質を変更しない範囲で行われるのであり、数mの盛り土により土地の形質を変更する大規模な工事を含むとは考えられない。

②80条では「所有者及び占有者の同意を得ることなく」という文言がある一方、100条の2にはこの文言がなく、所有者の同意が考慮されていない。これは、同意が不要な軽微な行為を前提としているものと考えられる。

③100条の2が制定された昭和34年の議論では、「公共施設予定地や保留地予定地等について、事業の目的に沿って維持管理し、または事業遂行のために第三者に使用収益させることができることを明確にするため」と説明されている。公共施設予定地や保留地予定地は、元の権利者に権利を復することはそもそも予定されていない。こうした土地上の使用収益に関して制定された条文を、最終的に元の所有者のもとに復することが予定されている土地上における同意なき工事を正当化するために援用することはできない。また、80条は昭和34年改正時に同時に整備された。その趣旨は「公共施設などの工事を施行すれば、土地の現状は著しく変更されることになり、そのような行為が果たして管理行為と言えるのか疑問もあるため」と説明されている。つまり、土地の形質変更を含む公共事業の工事は、100条の2の「管理」に含まれないとの解釈が前提であった。100条の2で区画整理外の工事が許容されるならば、80条は意味を持たないことになる。

国が私人の所有地上に同意なく工事を行なうことは、国家による典型的な権利侵害の場面であり、国家が国民の権利を侵害する場合には、法律の規定がなければならない、とする法律による行政の原理、侵害留保原則が適用される問題だといいます。この原則は、行政活動の予測可能性を確保し、行政による恣意を排除し、これにより国民の権利・自由を確保するという自由主義の原理を一つの根拠としています。したがって、権利侵害の根拠となる規定は、国民の予測可能性を確保するという観点を達成できる程度に、明確かつ詳細でなければならないといいます。

100条の2の「管理」にスーパー堤防の盛り土工事が含まれるとした原判決の解釈は、条文上からも、制定の経緯からも読み取ることはできない。法律の文言、構造及び制定過程の成り立ち、法律の根拠のない私有地上における本件盛り土工事について、控訴審では正当な解釈を示していただきたい、と主張されました。

4人の陳述終了後、都築正則裁判長は、すぐさま被控訴人に対し「求釈明に答えるように」と言い渡し、被控訴人は「こちらとしてはやっているが、裁判長からご指示をいただいたいたのでやります」と答えていました。

原判決に数々の錯誤や不明瞭な点がある以上、控訴審ではそれを明確にする審理が求められるところです。その中では、控訴人らが求める証人についても採用していただき、その証言を実際に聴きたいものです。

第2回期日は、8月1日(火)午後3時、東京高裁101号大法廷にて行われます。この間、間があくことから、必要に応じて三者による面談が持たれるとのことです。