住民の意見反映なき「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」

江戸川区北小岩一丁目のスーパー堤防で前代未聞の地盤強度不足が起き、高規格な堤防と宅地整備を一体的に行うはずの本事業の致命的な欠陥が明らかになったことを踏まえ、「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」が異例のスピードで開かれています。第1回は8月1日、第2回は8月20日。すでに第2回で「とりまとめ骨子案」が出されました。

本会開催の趣旨には「~上面における土地利用を踏まえた整備の進め方や共同事業者との適切な役割分担等を整理しておく必要がある」と。事業創設以来、30年も経っているのに、今さら?

骨子案には今後の対応方策として「地権者の事業への理解や協力が不可欠」「地権者との間で誤解や認識不足が生じないよう丁寧な説明が求められる」とも。こちらも今さらの感が。住民合意を軽んじてきた反省に立ったとも言えますが、今回も「とりまとめ」にあたり、住民・市民から意見を聴くことはせず。パブリックコメントもなし。たった4人の委員だけでの議論に過ぎません。やはり清水氏は今回も(こちらから)。わずか4人での検討会というのも異例。うち2人が法学部教授というのも?

骨子案の内容は、逆に言えば、いかにこれまで国と自治体が共有すべきことをせず、なすべきことをしていなかったか、ということ。そんなずさんな事業が、わが国唯一の超過洪水対策と喧伝されてきました。治水事業としての明らかな効果も知らされないまま。

こうした会議の持ち方を知るにつけ、住み慣れた地域、住まいを壊され、描いていた未来との決別を強いられた住民の苦しみなど顧みない、その姿勢をこそ見直し、再検討すべきと思わずにいられません。

さて、江戸川区では、北小岩の当該住民にアンケートを実施するのだそう。事業実施前にはいくら住民アンケートを求めても実行することはありませんでしたが、「事業に協力して良かった」という意見を期待してのことでしょうか。 今回、北小岩で事業後のアンケートをとるならば、次に事業予定地となっている上篠崎では事業前の住民アンケートをとってみてはどうでしょうか?

東部5区による「江東5区広域避難推進協議会」が先ごろ発表した「江東5区大規模水害ハザードマップ」。よく目を凝らして見ると、スーパー堤防施工箇所は「白」で、被害がないと示されていますが、その周辺は浸水継続時間が2週間に及ぶ「真っ赤」なところや家屋倒壊危険箇所も。市街地ゆえに部分整備しかできない欠陥がここにも。さらには「避難のための高台が必要。だからスーパー堤防を整備する」とあれだけ言っていたのに、どこにも「スーパー堤防へ避難せよ」とは書かれていません。「避難のための高台」では筋が通らないことにようやく気付いたのでしょうか? いずれにしてもこれまでの説明を撤回するなら、その説明をきちんとする責任があるでしょう。ぜひ国の第3回検討会でも取り上げては?

*江戸川区議会では、H18年から「スーパー堤防を避難のための高台に」と、元土木部長らが再三説明しています。たとえば、こちら(H20年・P42)、(H29年・P16)。「スーパー堤防」「避難」「高台」などで詳細検索するとたくさん議事録が出てきます。江戸川区HPのスーパー堤防Q&Aにも明記。一方、H30年の、危機管理室防災危機管理課長のスーパー堤防部分の議会説明は、土木部のそれとはトーンが異なり、現実的な説明になってきています。こちら(P1)から。