地盤強度不足も「責に帰することはない」~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告②青野証人主尋問

2番目に証言に立たれたのは国交省関東地方整備局河川部河川調査官・青野正志さん。

平成26年10月1日から平成29年7月6日まで、国交省水管理・国土交通保全局治水課企画専門官として、全国の河川関係事業やスーパー堤防整備についての事務を統括され、その後現職。本件スーパー堤防事業に最も精通している立場で、証言されました。

今井志津代理人による主尋問では、スーパー堤防事業の必要性について、

・人口、資産が集中し、ゼロメートル地帯の多い地域が洪水になれば甚大な被害となる

・避難のための高台のない地域であり、避難させるソフト対策も重要だが、そのためのハード対策が必要

・盛り土することで浸水被害が減少。加えて宅地や道路が整備され良好な都市空間となる。

・事業仕分けで一旦廃止となった際、地元の連合町会から12万人の署名とともに、事業継続の要望書が出された 

・気候変動により超過洪水が増えてくる  などが語られました。

代理人からは、あえて「素人的に考えると、一部の整備では意味がないとか、川のそばの避難場所ではかえって危険ではないかとの見方があるが」との問いも。「一部であっても、その部分は決壊することのない堤防になる」とのいつもの回答が。避難場所については「洪水が来る前に速やかに避難するのが基本だが、家に取り残されるなど逃げ遅れる人も出る。高い建物がない本件地区では、逃げ遅れた場合の緊急的な避難場所となり効果的」と、「逃げ遅れた場合」との新たな条件付き回答となりました。「素人的」などの決めつけはいかがなものでしょうか。

避難に関して、代理人は、さらに東日本大震災の際、市川市の国府台に向かう帰宅困難者で橋梁が混雑したことに触れ、証人は「地盤の低い地域では通路がなくなるが、スーパー堤防は決壊しないため陸路が確保され、その上を逃げることができる」と。このとき、代理人、証人ともに「国府台」を「こくふだい」と発言。きわめて基礎的な誤り。まして法廷での証言、「素人」でもまず間違えない?

盛り土については、構造令や設計施工マニュアルどおりに行っていることから安全性が確保されていることについて、時間をかけて説明があり、地盤強度不足については「調査の方法や時期について配慮が必要だった」。地盤改良工法については、これまでの説明を繰り返したあと、地権者への引き渡しが遅れたことについて、メーカーとの新築契約が遅延した場合は不利益分の費用を補償、何軒か手続きしていること、一方、盛り土の安全性に絡めた補償についての請求は一切ないことが語られました。

途中、代理人から指示を受け、証人が証言台で作図する場面も2度ありましたが、傍聴者にはどのような図が描かれたのか不明。そのまま尋問を続けようとするお二人に、都築裁判長から、作図にはサイン・押印が必要と告げられ、そのようにされていました。

「本件地区では50数軒の住宅が完成している。責めに帰することは発生していない。これからも進めていくのでご理解いただきたい」と締めくくりました。

(*稲宮の傍聴メモより)

約束の40分をはるかに超える証言になりましたが、冗長に流れた観は否めません。