スーパー堤防の存在がゆがめる河川行政~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審結審⑤

2019年3月27日 00時28分 | カテゴリー: スーパー堤防, スーパー堤防裁判

国土交通省は、スーパー堤防は「一部の整備であっても、他の地点で決壊してしまって水が流れ落ちてきても水がつかりづらくなる」と説明しましたが、西島和代理人は「これはもはや堤防、河川管理施設としての便益の説明を放棄した驚くべき発言」と一蹴。

河川管理者である国土交通省の使命は堤防が決壊しないように実用的な越水対策をすすめることであり、これを怠ったまま『堤防』としては機能しない盛り土工事を堤防工事と称して巨費を投じるのは流域の危険を増大させる行為」とし、「スーパー堤防は解決されるべき課題の解決を妨げる」と指摘。スーパー堤防整備には長い期間と莫大な費用がかかることから、会計検査院が、通常の堤防の整備や堤防強化対策であれば治水上早期の完成が見込まれることに鑑み、「通常堤防の整備やスーパー堤防以外の堤防強化を優先すべき」としていることを紹介されました。

さらに、2015年の鬼怒川の堤防決壊が甚大な被害を発生させたことを踏まえ、「『越水すれば破堤する』通常堤防の強化が河川管理における大きな課題であり、解決策は、大規模な洪水に対しても決壊しない越水対策、耐越水堤防の整備である」とした上で、国交省の言動不一致を厳しく糾弾されました。

国交省は鬼怒川の堤防決壊を受け、2017年9月に整備計画を改訂。『危機管理対策』として、堤防天端の保護や裏法尻の補強をする、としている(P62)。この『危機管理対策』はまさに実用的な越水対策であって、このような課題解決に財政・人的資源が投入されるべきであるが、おそろしいのは、国土交通省が、越水対策は「行っていない。行う予定もない」と証言していることである。このような説明は『越水対策の技術はスーパー堤防以外に存在しない』という建前を維持するためになされているもので、河川管理者である国土交通省が必要な課題解決をないことにしなければならないという状況こそが危機的とも言える

そして「このように行政をゆがめ、流域の安全のための河川管理がまともに行われることを妨げる要因となっているスーパー堤防を押し付けられ、生活を破壊された控訴人らの精神的苦痛をご理解いただき、救済していただくことが、今後の河川行政を健全化し、流域の安全性を向上することにもつながる」と訴えられました。

この裁判期日に先立つ3月12日、本件施工区域の隣り、東小岩3丁目地先において「浸透対策」工事が、国の国土強靭化のための3ヶ年緊急対策としてなされることがわかりました。「堤防は土でできているため、長い時間水に浸かると崩れ、決壊に至る恐れがあるため、崩れに対する安全性を高める」のだそう。期間は5月下旬~10月下旬、工事内容は川表での矢板の打設及びアスファルト舗装。現地での施工について区は「水みちがあり、その浸透を防ぐため矢板を打つ。アスファルト舗装はかねてから要望があったので行う」と説明。予定地はスーパー堤防計画地。しかし、スーパー堤防は国土強靭化には採用されなかった? 土だけでできていること、速やかに施工できないことは、喫緊の水害対策にはやはり致命的ということ。耐越水工法「アーマー・レビー」ならもっと国土強靭化に寄与するはず。

土を盛るだけの堤防が安全とは言えないことは国交省自らも認め、現場ではすでに土堤原則は崩れ、さまざまな工法が実施されていながら、その一方で、法廷でも議会でもそれを認めようとしない、認める発言は死んでもできない、という苦しい現状が明確に浮かび上がっています。

昨年10月の江戸川区議会決算特別委員会土木費審査(P63)において、生活者ネットワーク(質問者・伊藤議員)は荒川左岸工事を例に挙げ、土堤ではない事実を指摘。これに対し、計画調整課長は「江戸川の堤防と違いまして、荒川左岸は土堤ではなくて、コンクリートで低くした堤防になっております」と答弁。これに関し委員会後半で、同課長より「先ほど、伊藤議員の質問の中で、私が中川の左岸堤防で土堤ではないと誤解する発言がありました。中身には土、土堤にコンクリートを低くしている堤防でございます。以上でございます。申しわけございませんでした。」との釈明が(同議事録P96)。担当課長も土堤ではないと認識してしまうほどの工事内容、であることには間違いないところです。