宅地整備の視点なきスーパー堤防~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審結審⑥

2019年3月30日 00時15分 | カテゴリー: スーパー堤防, スーパー堤防裁判

最後は、小島延夫代理人が、盛り土の危険性と本件工事がもたらした深刻な被害について陳述されました。

まず、今回の審理を通じて明らかになったこととして、「国にはスーパー堤防整備が宅地の整備でもあるという視点が欠けていた」と指摘。具体に3点挙げられました。

  • 建築関係のガイドラインを検討し、盛り土に反映することをしておらず、盛り土に起因して生じた問題事例などの分析検討をしていない。
  • 国が確認したという治水地形分類図は、過去の洪水や土砂災害の状況を知り、堤防管理や水害予防などに役立てるためのものであり、2万5千分の1という大雑把なもの。古地図を見れば、本件地区は戦前はその多くが水田であり、水路やため池があったことが判明するが、国は古地図の履歴調査をしていない。
  • 控訴人らが「雨水は本件区域の地盤改良されていない部分に浸透し水が溜まり続け、地盤改良していない盛り土地盤内を選択的に流れ、盛り土の粒子間の間隙を埋めていた泥質物を洗い流して水路を開通させ、パイピング破壊につながる可能性もある」と指摘したところ、国はなんと河川からの水が堤防を通じて浸透してくることについて検討したと回答。堤防のことしか考えていない。

本件スーパー堤防工事は平成27年4月には開始されましたが、国交省関東地方整備局が「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」を開催したのは昨年8月から9月。「このときまでは宅地という観点からどういった整備がなされる必要があるかについて調査検討していなかったのであり、こうした検討をせず本件工事がなされていた」こと、さらに、検討会委員には河川工学、土木工学、法律の専門家しかおらず、「建築関係の地盤構造の専門家が入っていない状況では、到底宅地に関する専門的検討はできない」ことが指摘されました。

また、盛り土部分において11地点において地耐力不足の軟弱層が見つかっている点、特にほとんど地耐力を持たない、極めて軟弱な「自沈層」が生じている点を重視。「国が主張するように、素材を選び、転圧をかけ、プレロードまでやって、このような軟弱層が存在するなど通常は考えられない」と断じました。

この点について、証人尋問では「江戸川区が実施した支障物撤去及び埋め戻し工事の影響もある」との国側の証言があり、証人は「それ以外に考えられないか」との質問にも「当時はそう思った」と証言。

小島代理人は、国が地耐力不足発生の原因を把握しながら、平成29年5月の住民説明会(まちづくり懇談会)ではこれに一言も触れていないこと、さらに、区が工事をした地点以外の盛り土部分でも自沈層が生じていながら、国が調査も検討も行っていない点について、「宅地というそこに住む人の安全に深く関わる問題でありながら、説明をしない、分析検討をしない国の対応は極めて不誠実なものと言う他ない」と断じました。