市民が広げる「裁判の公開」~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審結審⑦

2019年4月2日 12時16分 | カテゴリー: スーパー堤防, スーパー堤防裁判

報告集会で挨拶される小島延夫弁護団長

小島延夫代理人は、地質データから事業地の履歴を調査し、適切な地盤対策ができたところ、そうした調査をせず、土地の安全性が確保できていないこと、また、プレロードの結果としての沈下から判明する不同沈下の危険性を指摘されました。

本件地区における沈下の著しい地点は昭和40年代頃まで水田であった場所とほぼ一致、圧密沈下が起きやすい状況にありながら、国はこのうち一部しか地盤改良工事を行っておらず、半分以上は特段の対策なく放置しており、極めて危険、と主張。東日本大震災により、江戸川区清新町や浦安市ではプレロードによる盛り土が液状化し大きな被害が発生した点にも言及されました。

そして、本件工事がもたらした深刻な被害についても、東日本大震災で住民が被った不眠症などのリロケーションダメージ(移転被害)と重ね合わせ、転居のたびに人間関係を断たれ、ストレスを抱えていること、慣れ親しんだコミュニティから切り離され、心身のバランスを大きく崩すなど多大な被害が発生している事実を紹介。本件は自然災害ではなく、スーパー堤防事業を施工する上で、人が引き起こした被害であることから、全住戸が一斉に立ち退き、仮住まいを強いられることは区画整理では極めて例外的であり、こうした原因はすべてスーパー堤防事業のためである、としました。

国が盛り土する法的権限がないこと、治水上の必要性がないことに加え、さらに住民を危険にさらす事業であることから、「なぜ本事業をすすめるのか全く理解できない」としたうえで、「裁判所におかれては以上の点をよくご賢察され、公正なる判決をくださるようお願いします」と述べられました。

裁判後の報告集会で、小島代理人は参加者を前に次のように語りました。

控訴の時、地耐力不足が発覚し、徹底的に調べたことで盛り土についても細かく、かなり具体的に指摘することができた。一方、国は書面も出さない。しかし行政を相手どる裁判において、自治体や地方の開発局が負けたことはあっても、国が負けたことはない。裁判長には公正な判断をしていただきたい。」

そして、憲法において保障されている「裁判の公開」に触れ、「裁判傍聴の意義は大きい。今回、文書提出命令が出たのも、証人採用に至ったのも、毎回大法廷を埋める多くの方々が傍聴に来てくれたから」と、傍聴者に感謝の意を述べられました。

控訴人代理人の弁論は事実・法律・科学に基づき、聴き入る市民にもわかりやすく、随所でパワーポイントも活用しながら、理路整然と展開されました。すべて傍聴したうえでは、負ける要素などみじんもないように感じられます。一方、被控訴人・国の姿勢は、不遜で不誠実と感じずにはいられません。そもそも法廷で陳述することがなく、その姿勢もなく、裁判長に聞かれてもひとこと最小限の言葉を返すだけ。控訴人らの主張に対し、言わせておけ、とばかりに法廷でだんまりを決め込むのではなく、国の直轄事業・スーパー堤防事業の施工者として、そうではなくこうなんだ、と国の主張を正面から堂々と、声に出して説明してほしかったと思います。

都築政則裁判長は来年退官されるとのこと。昨年、霞ケ浦導水事業差止訴訟で画期的な指揮をとられました。本件においても公平公正な判決を期待するところです。

判決は、7月16日(火)午後4時、東京高裁101大法廷 にて言い渡されます。