施設に通うにあたっては「通える状態にある」ことが前提条件ですが、バスでの移動が可能ならばどこへでも行けるはず、という考えは、障害当事者とその家族の立場に立ったときには、そうではないはずです。なるべく近いところを希望する人、また、バスでの送迎があるなら、遠くでもいいという人など、軽度から重度までさまざまな障害の状態や家庭環境などによって、異なるものでしょう。基本的にエリアで分けるにしても、こうしたところを加味することが必要ではないでしょうか?
小松川にある「さくらの家」は、これまでは、地元の小松川、平井、そして荒川を渡って東小松川、西小松川、船堀、北葛西の方々が通っていましたが、今後のエリア分けでは、「さくら」に通えるのは平井の方々だけで、それ以外の方は「希望の家」に通うことになります。東小松川や船堀などの方は、川を渡らずに、地続きで「希望」に通えることで利便性がよくなり、さらに災害時のことを思えば、メリットもあります。一方、地元中の地元である小松川の方については、そもそも空白地域に新たにつくられて安心して通えると考えていたところ、逆に橋を渡ってわざわざ遠くまで通わなくてはなりません。
3.11以降、すべてのことに防災の視点が必要となりましたが、あの日、学校や保育園などのお迎えで、最も遅くなったのが「さくらの家」。翌日の19時でした。こうした経験を踏まえ、子どもを通学させている保護者たちは、なるべく家の近くや歩いて帰宅できる場所の重要性を再認識することになりました。災害要援護者となる障害者の家族であればなおのことその思いは強いでしょう。「希望の家」が増築されることによって、区内ほとんどのエリアをカバーすることになりますが、今や防災の観点ははずせません。何か起こった際の家族への引き渡しを考えれば、やはり身近な地域であることが重要であり、特に、危険な橋をわざわざ渡らせるようなケースは避けるべきです。
また、「これまで通っている方はそのままそこの施設に通うことができ、新しい方については、希望の家に移ってもらう」という分け方についても一考の余地があるのでは。通いなれた施設での継続を望むことは理解できますが、新エリアによって利便性が増す方もおり、新たな施設への移動を希望する方もいると思われます。
肢体不自由で自立歩行ができない、また、視覚障害もある、といった方々もいるのです。単にエリアだけで分けるのではなく、こうした障害の状態や家庭環境、さらには災害時の二次被害防止なども考慮に入れ、再検討すべきです。