4月2日付け「朝日新聞」夕刊に江戸川区のスーパー堤防事業の不要性が大きく取り上げられました。3月26日号の「週刊金曜日」にも「ムダな公共事業の典型」として掲載されています。
国会では衆議院の予算委員会に続き、参議院でも小池あきら議員が質問に立ち、前原大臣は「ダムと同様、税金の使い道を考えたときに、自公政権の時に進められていた計画のままでいいのか、当然ながら見直しの対象になっていく」と述べ、現地視察も行なう考えを示しました。
スーパー堤防事業はどこで生まれて、なぜ事業化されたのか。
それは1980年代の中曽根政権時代に遡ります。
当時、経常赤字が拡大するアメリカに対し、日本の経常黒字は巨額になっていました。日米関係のみならず、世界経済の調和ある発展という観点からも、この是正を命題として突きつけられた日本は、元日銀総裁の前川春雄さんを座長に「国際協調のための経済構造調整研究会」を立ち上げました。その結果、発表された前川リポートでは「日本の経済構造を輸出に頼らない内需主導型にする」ことを提言。その方策として第一に挙げられたのが「住宅対策及び都市再開発事業の推進 」でした。内容は「住宅政策の抜本的改革を図り、住宅対策を充実・強化する。特に、大都市圏を中心に、既成市街地の再開発による職住近接の居住スペースの創出や新住宅都市の建設を促進する。併せて都市機能の充実を図る。」というもの。その具体策が「盛り土によってまち全体の安全性を高め、そこに高層マンションを建設して住宅難を解消する」こと。イコール、区画整理などまちづくり事業と一体となったスーパー堤防事業なのです。
今でこそ、水害対策、防災対策、温暖化対策ということが声高に言われますが、もともとは全く違うことから発想された事業なのです。構想から四半世紀が経ち、経済の状況は変わり、人口も減少に転じた今、この事業は説明のつかない事業になってしまっています。そもそも、用地買収をしないことが大前提の事業でありながら、区は減歩緩和を理由に、先行買収を行なうというイレギュラーな手法をとっています。
第一回定例会で施行規程が可決された「北小岩一丁目東部地区」については、区が事業を必要とする根拠のひとつとしてきた液状化への対応を「不要」とした国の判断をお伝えしましたが、さらに、新しい事実も判明。道路が狭小なため、緊急時に消防車や救急車が入れない課題を解決する、という区の説明について、住民がそれを改めて確認したところ、所轄の小岩消防署からは「現状のままで、消防活動や救急活動に全く支障はない。区当局からこの件について問い合せを受けたことはない」との回答を先月末得ています。
必要な施策への財源確保が求められる中、次々と実施の根拠が崩れるこのスーパー堤防事業が、それでも不可欠な公共事業として、莫大な税を投入することに国民の理解が得られるのかどうか。時代と地域の価値観に合致している事業なのか否か。その答えはNOです。
区は、方針ありき、計画ありき、ですすめるのではなく、八ツ場ダム問題を教訓に、ここで冷静に見直す姿勢を持つべきです。
↓事業認可は下りていないが、先行買収された土地にはこのような看板が。