徹底した住民参加でつくった「佐世保市地域福祉計画」

福祉健康委員会視察報告③

→佐世保市では、福祉・保健・医療機能がひとつになった「すこやかプラザ」を昨年オープンさせた。8階の研修室でヒアリング。住民参加についての工夫、特に子ども参加について質問。 

 地域福祉計画は、平成12年6月の社会福祉事業法等の改正により、規定された事項であり、計画の策定は自治体が主体に取り組むものです。地域住民の意見を十分に反映させた上でつくるものとされており、地域福祉を総合的に推進する大きな柱と言えます。現代社会は、家庭内や地域における人のつながりが薄れ、それが生活不安やストレスを生み、新たな社会問題となっています。そこでこうした問題を解決するために、地域福祉をすすめることが求められてきたのです。

 江戸川区では平成15年4月に施行された社会福祉法に則り、1年という非常に短期間で16年4月、向こう8年間を見据えた計画(60ページ)をすでに策定していますが、佐世保市におけるその策定過程、策定内容には見習うべき点が多々あります。

 佐世保市では、まず平成14年に計画のための指針をつくり、2年間研究したのち、16年に策定に着手。市民参加の手法を積極的に取り入れ、5年間という丁寧なプロセスを経て21年3月に、向こう5年間にわたる、144ページに及ぶ計画を策定しました。

 地域における福祉推進計画を立てるには、そこに暮らす住民の意見を反映させることが大前提です。「住民参加の方法」を「最も重要なもの」とし、18年に設置した「地域福祉計画策定委員会」において、住民参加の方法などを方針に盛り込みました。3年間で住民座談会「地域福祉・お茶の間トーク」を市内全31地区で開催。ワークショップも交え、住民、ボランティア、NPO、事業者、社会福祉協議会、行政が一体となってまちの課題、ニーズを共有する取り組みを57回実施。子ども、障害者、高齢者まで、延べ参加者は2714名に上り、1回の平均参加者は47.6名になりました。生活上、何らかの事情で「お茶の間トーク」に参加できなかった住民については、当事者と、その住民を支援する団体やボランティアも交え「ふれあいトーク」という座談会を別途行っています。

 「家庭内の問題の肥大化」や「支援が必要な住民の生活不安」「地域内による協力体制と理解の低下」など、6つほどの課題が浮き彫りになったことで、「周りの課題に早く気づき、解決につなげられる地域をつくる」ことなど、3つの目標を掲げ、市の計画とは別に、全地区ごとの地域福祉活動計画を各地区住民の力でつくったことも画期的です。

 佐世保市には、市民協働推進室という専門部署が置かれており、市民と行政との対等なパートナーシップのもとで「市民協働によるまちづくり」を推進するため、様々な取り組みが進められています。「市民協働推進指針」が平成17年に、「市民協働推進計画」が昨年策定され、あらゆるところに住民参加が保障されています。区民との協働をキーワードにしている江戸川区ですが、その内容には大きな差があり、佐世保市の取り組みには大いに学ぶところがあります。

  区では、今後「長期計画」及びそれに連動する「地域福祉計画」など個別計画の改定作業に取り組むこととしていますが、区民との協働を名実ともに推進していくことが重要です。