住民との協働による治水対策

「スーパー堤防事業」まとめ意見報告②

区は、景観行政団体になるべく作業をすすめており、この中でもスーパー堤防事業を議論すべきということを主張してきたところです。
1月には区民参加でまちをチェックするワークショップが行なわれましたが、北小岩一帯は「落ち着いた街並み」と評価され、篠崎も「浅間神社、篠崎公園、妙勝寺などが一体となった景観を形成している」と高い評価がなされました(残念ながら区のHP上に紹介はされていませんが、資料あり)。また、区は「文化財・史跡探訪マップ」を3月に発行しましたが、両地区はこの宝庫でもあります。こうした観点も含め、スーパー堤防でいったんまちを壊すのか、保存すべきなのか、の検討もなされるべきです。
「河川法」は明治29年に「治水」を目的として制定され、昭和39年の改正では「利水」が加わり、そして平成9年の改正では「環境保全」と「住民意見の反映」がそのポイントとなりました。さらに平成16年、21世紀になって「景観法」ができています。都市開発を強力にすすめてきた時代は過ぎ、これからのまちづくりに優先されるべきは「平成河川法」と「景観法」の理念ではないでしょうか。

また、意見が二分されている状況においては、スーパー堤防以外の安全対策の可能性を探ることも必要です。温暖化の影響で起きるであろう大水害から住民を守ることが大きな目的とされていますが、自然の猛威に人智はどこまで対抗できるのか。その有効性を担保することはできないということは、先の「ゼロメートル世界都市サミット」でも報告されています。いかなる洪水に対しても被害を最小化する、という考えはもちろん理解するところであり、この点については、日々進歩する国交省の高い技術力を持ってすれば、他の工法を使って安全性を高めることは可能だと考えます。スーパー堤防は財政面はもちろんのこと、コミュニティ崩壊などの社会面、そして何より住民自身の負担が大きく、副作用が大きすぎます。川から水があふれないよう河道で抑える、堤防を強化すると同時に、万一あふれた時には流域で対応するなど、いくつにも重なった安全弁を備えるという、住民との協働による治水対策に転換することもできるのではないでしょうか。これは災害時、区が旨とする自助・共助の考えにもつながるものです。

3月の委員会で指摘したことですが、昨年、利根川の洪水時の流量について、国交省が公表してきたデータが過大であり、誤っていたことが八ツ場ダムの住民訴訟で明らかになっています。この事実を受け止め、スーパー堤防建設を実施した場合と、現状考えうる他の工法を行った場合とで、治水安全度にどの程度の差があるのか、改めて検証することが重要です。住民意見の尊重という「平成河川法」、また、かつての日照権のように、建築紛争によって市民が勝ち取ってきた「景観法」の主旨に則り、日本の高い専門的技術力が真に住民生活の安心・安全のために発揮されることを望まずにはいられません。