中川の防災ベルト構想とは?

環境都市との調和をどうする?

 11月の建設委員会において中川の親水化及び防災ベルト構想が、詳細な図表などをもとに報告されました。中川左岸地域は区内でも最も地盤が低く、災害対策はどの地域よりも急がれるべきところです。区が、堤防強化や防災拠点の確保を講じるのは当然のことではありますが、構想の内容を見ると、問題点がいくつかあると考えます。

 中川は荒川と並行して流れる川です。本構想は、荒川の中堤から東、つまり中川を埋め立てることで100haの高台をつくり、避難場所や防災ステーション、また親水性を高めたアメニティスペースなどにしていくというもの。篠崎や北小岩のスーパー堤防事業が住民移転を前提とするのに対し、そうしたことも必要のない、有効な洪水対策として、地域の安全性を高めることができる点においては大きなメリットがあると言えるかもしれません。本構想は、学者や行政のみのメンバー構成で、8月に区が設置した「気候変動に適応した治水対策検討委員会」から出されたもの。いかにも工学的専門見地によるものと感じます。この委員会発足の報告があった9月の委員会で、私は「区の治水対策なのだから、地域の川の姿を熟知する住民も委員となるべきではないか」と質問しましたが「有識者会議なので住民参加はない」との答え。構想や計画の段階からの住民参加がなければ、住民にとっての唐突感は否めず、行政と住民のあつれきは今後も避けられないでしょう。

問題点その1は、流量について。荒川の計画流量は毎秒7700t、中川は700t。中川が埋め立てられるとなれば、荒川に8400tが流れることになりますが、果たして耐えうるのでしょうか。それでなくても、区はこれまで、温暖化の影響で、計画流量を大幅に上回る洪水対策を講じる必要があるとしてスーパー堤防事業の必要性を説明してきているのです。

その2は、環境都市・東京のあり方について。都は「10年後の東京」構想の中で環境対策を最重要視。オリンピック招致に向けても、環境に最大限配慮する大都市の姿を大きなセールスポイントにしようとしています。川は都市の貴重な自然空間であり、温暖化やヒートアイランド現象の緩和に大きな役割を果たします。本構想は、ソウル市が、暗渠となっていた清渓川(チョンゲチョン)の復元事業を行い、国際的な評価を受けたこととは対照的です。

その3は、川に生きる生物の多様性に関わる点です。「気候変動枠組条約」は広く知られるようになりましたが、92年のリオデジャネイロにおける国連環境開発会議(UNCED)での、もうひとつの主要な成果が「生物多様性条約」であり、日本ももちろん締結国。多様な生物がいてこそ、人類の生存が支えられています。せめて現存する自然をなくさないことが21世紀の命題です。
 
 区はここへきて「ひとつの構想に過ぎない」としていますが、専門家の意見だけでなく、広く区民の意見も聴取し、総合的な判断をすることが必要です。