9月1日から3日まで、建設委員会では所管事務調査を実施、広島県尾道市と兵庫県神戸市を訪れました。尾道では「景観」と「駅前再開発」と「防災」、兵庫県神戸市では「震災後の復興」をテーマに「土地区画整理」「再開発事業」、そして「兵庫県耐震工学研究センター」を、それぞれ視察しました。
お寺や坂の多いまち、芸術文化のまちとして有名な尾道は、2005年に施行された「景観法」に基づき、昨年から「景観条例」「景観計画」「景観地区に関する都市計画」「屋外広告物条例」の4点セットでの取り組みを推進。「今ある景観と調和したまちづくり」をコンセプトに、さまざまな立場からの意見を積極的に取り入れながら、中国地方の自治体で初めての「景観計画」をつくりあげました。建物の高さ、色彩やデザインなどに規制をかけ、違反については罰金も課しています。市のどこにいても、人々の視線は尾道水道に注がれていることが調査の結果判明。どこからでも尾道水道が見渡せることを基本に検討がすすめられたといいます。
江戸川区でも「景観計画」策定の準備がすすんでおり、都内ではまだ世田谷と府中の2つしか登録されていない「景観行政団体」になるための取り組みが始まっています。都道府県や政令市、中核市は自動的に「景観行政団体」として登録されますが、その他の区市町村については都道府県の同意を得て初めて登録されるものです。登録されると、尾道のように、景観保全のための独自のルールをつくることができ、違反についてもペナルティを課すことができるのです。
今では市民公募委員の参加は一般的なことですが、尾道で特筆すべきは、議員も一般市民と同様に公募対象としたこと。17年前に街並みにそぐわない高層マンション計画が持ち上がったことをきっかけに、「環境」「景観」に対する考え方を早くから持っていた尾道市民の代表らしく、議員の中にも計画策定への参加希望者が多数あったことから、論文など通常の公募選考過程を経て、ひとりの議員が選ばれ、メンバーとなりました。江戸川区議会では、審議会や計画検討委員会などに議員が参加するときは、所管の委員会の委員長と副委員長(大会派からなることが多い)、あるいは、第一会派と第二会派または交渉会派(4人以上の会派)からの内部推薦という形がとられています。あて職ではない、意志ある人の参加の保障は、ぜひ見習いたいところです。
生活様式の変化や経済活動によっても景観は変わっていきます。そうした中で、たった一つの異質な建築物によって「景観」が壊されることのないよう、マンション紛争などを経て市民が獲得した「景観」という価値への意識を高め、快適な生活空間を確保する取り組みをすすめていきたいものです。