地域特性を活かした北九州市「温暖化対策地域推進計画」

九州視察報告②

→東灘東部地区にある風力発電事業は「エコプレミアム」産業創造事業。1基あたりの出力1990kWで、電気は電力会社に売却。 

  報告第二弾は「北九州市地球温暖化対策地域推進計画」。北九州市役所でヒアリングしました。

  早くから「ものづくりのまち」として発展してきた北九州は、4大工業地帯のひとつとして、日本の高度成長を支えてきたと同時に、深刻な産業公害をもたらしてもきました。しかし、その公害克服の歴史が、昨年視察した水俣市と同様、環境都市への道をいち早く切り開いてきたとも言えます。かつては大腸菌すら棲めなかった「死の海」洞海湾には、100種以上の魚介類が棲み、日本一の降下ばいじんを記録した空は「星空の街」に選定されるまでになっているのです。市民との協働も含めた全分野への総合的な取り組み、環境首都になるという強い意志や予算配分が評価され「日本の環境首都コンテスト」では第一位を獲得しています。

  計画は家庭・産業・運輸・都市構造・廃棄物・市役所率先実行・再生可能エネルギー・環境国際協力・人材育成と技術開発、以上9つの部門ごとに具体的取り組みが網羅されています。
  身近なところでは、廃棄物削減や家庭における省エネがどこの自治体でも上げられますが、北九州では住民と職員による「1万人のごみ出し早朝指導」を実施、2時間の取り組みを2週間実行したことにより、開始1年で25%のごみ削減を達成しています。また、通常は店舗ごとに実施されている「ノーレジ袋ポイント」については、市内276店舗共通にしたことで啓発がすすんでいます。
  産業部門では、工業地帯の地域特性を活かし、鉱山会社の廃熱を近隣工場に供給するなど、エネルギーリサイクルも。報告①のマンションや風力・太陽光ハイブリッド街灯など、環境負荷の低減につながる製品やサービスを「エコプレミアム」に指定。市内産業界全体の環境配慮活動を促進しています。
  都市構造では、やはり、政令市一の高齢化(高齢化率32.5%、25万人)という特性から、「歩いて暮らせるまちづくり」をテーマに住宅や公共施設、福祉施設を集約、コミュニティバスを走らせ、次世代型路面電車も視野に入れて「環境首都総合交通戦略」策定を計画しています。
  アジアの国々と近い地の利から、大連市や青島市の環境汚染改善の取り組みに対する協力関係を結んだり、スラバヤ市では生ゴミ処理の講習会を開催、また、環境対策の視察を積極的に受け入れています。
  人材育成・技術開発の観点から、環境未来技術への取り組みには助成制度も設けています。
  学校エコ改修工事では、建築技術者の環境技術のスキルアップ、児童生徒の環境学習につなげています。教室は23区のように冷房化されていないため、校舎に夜間の冷気を取り込む夜間換気方式、外断熱、また内装の木質化などのエコ改修が行なわれています。

  今後、江戸川区でも学校の改築が相次ぎますが、エコの視点は欠かせません。地域の子ども達が毎日通う学校施設は、めったに人が訪れない「ナントカ館」などよりもずっと大事にされるべき。21世紀型のよりよい地域施設となるよう、知恵を絞らねばなりません。