「東京大気汚染訴訟」和解に思う「サーマルリサイクル」

都の「カーボンマイナスムーブメント」逆行の側面も

 昨日、11年に及んだ「東京大気汚染訴訟」の和解が成立しました。自動車の排ガスにより健康被害を受けたとして、都内のぜん息患者の方々(633人のうち、亡くなるなどして最終原告数527人)が、国や都、自動車メーカーなどに損害賠償を求めていたものです。これにより、①都は医療費助成制度を創設し、各被告が資金拠出②国と都は道路環境対策の推進で大気汚染軽減③メーカーは解決金12億円を支払う、などが決まりました。医療費助成の分担金は、国が60億円、メーカー33億円、首都高速道路が5億円です。
 
これまでこうした訴訟の被告は国や都でしたが、今回の訴訟では、自動車メーカーなどもその対象となり、結果、和解に合意しています。特に私が注目したのは、メーカー側の「他の地域よりも車の保有台数、通行量が多いという東京の特徴に配慮した。」とのコメント。
 
そこで思うのが清掃工場からの排ガスです。大気汚染の主な原因は、幹線道路を通る車の排ガスと、清掃工場からの排ガスだと指摘されています。東京23区は来年から廃プラスチックを焼却する「サーマルリサイクル」を実施することはたびたびお伝えしてきました。江戸川区は容器包装プラ7品目をリサイクルする方針ですが、各区のリサイクル体制がなかなか整わない中では、今後、23区616平方キロメートルの中に22も林立する清掃工場において、多くのプラスチックが焼却されることになるでしょう。可燃ごみが大量に増加することは明白で、これによりCO2の増加は避けられず、さらなる有害物質排出の懸念もぬぐえません。横浜市では、7つあった清掃工場をリサイクルの推進により2つ減らした結果、周辺の子どもたちのぜん息罹患率が劇的に減ったという事実もあります。

 京都議定書において、日本は温室効果ガス排出量を「90年比6%削減」と掲げながら、2005年は削減どころか、8.1%も増加。石原都知事は、安倍総理発言に先立つ2006年秋、環境都市をめざす首都東京の使命として「温室効果ガスの排出半減」を打ち出しています。今回の和解を受けて「社会全体で大気改善への決意を新たにすべき」とも。東京都は現在「東京都環境行動計画」を改定中で、その「中間まとめ」には随所に「カーボンマイナスムーブメント」の取り組みが盛り込まれているのです。

そんな中で、23区が着手する「サーマルリサイクル」は、850万人が毎日出すごみを、埋立より焼却、電力への転換という新たな手法で処理していきます。ここはやはり、焼却量を極力減らす努力はもちろんのこと、清掃事業としてだけでなく、もっと総合的な観点からとらえ、検討していく必要があると考えます。

「ボランティアフェスティバル」(7/15)で私たちの推薦人でもある小林多鶴子さんと。右は、アジアの留学生の助っ人「江戸川アリスの会」の活動を見学、お琴の音に聴き入る。源心庵にて(8/7)