盛り土整備は宅地造成のためではなく、スーパー堤防のため~江戸川区スーパー堤防取消訴訟控訴審②
控訴人訴訟代理人からは、弁護団事務局長でもある大江京子弁護士が最終弁論に立ち、冒頭、原判決における二つの誤りを指摘しました。
一つは、本件都市計画及び事業計画の適否を判断する上で、高規格堤防(スーパー堤防)事業は考慮すべき要素とはならないとして、高規格堤防の必要性、有効性の有無の判断を避けた点。もう一つは、盛り土整備を必要とした本件都市計画決定及び事業計画決定について、江戸川区の裁量権の範囲内であり、違法はないとした点です。
「仮に、本件土地区画整理事業の目的が合理的であるとして、その目的を達成するために、盛り土整備が本当に必要か」。この点が、本件都市計画及び事業計画決定の違法性を論じる上での核心の一つでありながら、原判決は上記のとおり、この核心を避けました。
大江弁護士は、「本件事業計画の目的を達成するために、盛り土整備は不要である」と述べた上で、次のように弁論を展開しました。
「(被控訴人の言う)『緊急時の消防車等の進入路や災害時の避難経路を確保する』との観点からみても、盛り土整備の必要性はない。そもそも、盛り土整備はスーパー堤防のために必要なのであって他に理由はない。被控訴人は終始一貫、スーパー堤防事業との共同事業しか考えてはいなかったのであり、盛り土整備を伴わない代替手段を被控訴人が検討しなかったのも当然である。『緊急車両の通行及び避難経路の確保に係る支障解消』のために盛り土整備が必要であるとする被控訴人の主張は苦し紛れの詭弁であり、つじつまがあっていないことは誰の目にも明らかであろう。『盛土整備が必要であるとした被告の判断は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くとまではいえない』とした原判決の認定は、非常識である」。
「被控訴人は、スーパー堤防整備事業を推進すべく2006年に「江戸川区スーパー堤防整備検討委員会」を設置、同年「江戸川区スーパー堤防整備方針」を策定して以来、今日に至るまで一貫して、本件地区において国のスーパー堤防事業と一体のまちづくり事業をひたすら推進しているという事実を直視しなければならない。しかし、本件訴訟では、被控訴人は、『盛り土は区の単独事業としての宅地造成事業である』と強弁しており、脱法手法を用いていることも指摘しなければならない」