定まらぬ区~江戸川区スーパー堤防仮換地処分取消訴訟第6回口頭弁論

 前回の弁論期日で、谷口豊裁判長は被告・江戸川区に対し、「高規格堤防を行うにあたり、地権者の同意が必要かどうか」、確たる説明を求め、江戸川区は、その宿題を今回提出しました。この論点は、国と区を共同被告とする第三の裁判「スーパー堤防差止訴訟」で争われているポイントと同じです。 

 区の書面にある「土地区画整理法100条の2により、その土地の管理権を持つ江戸川区との合意により土地使用権原を有し、適法にスーパー堤防事業を実施している」というところまでは、これが正しい根拠かどうかは別として、5月20日の「差止訴訟」での国の主張そのままであり、齟齬はありません。しかし、驚くことに、「同意が不要な理由」として書面に挙げているのが、半月ほど前の「差止訴訟」において、原告代理人の指摘を受け、法廷の場で国が撤回することとなり、根拠法としては偽りであった「河川法」の条文でした。撤回発言は調書にもとられました。

 別個の二つの裁判で争われている同一のポイントについて、被告は、それぞれ言っていることが違うという何ともあきれた状態に。さらに江戸川区は、「区の見解」を求められていたにも関わらず、「国の見解」はおおむね次のとおり、として書面を作成していました。 

 5日に行われた6回目の期日では、まず、これについて原告代理人・小島延夫弁護士が「この『国の見解』を、区もそのまま『区の見解』として主張するということか」と問いました。前述のとおり、「差止訴訟」では、「土地区画整理法100条の2」だけの主張に転換しています。 

 何度か煮え切らないやり取りが続いた後、被告代理人は「(高規格堤防は国の事業だから)私から表明する必要はない」と、開き直り? 

 「国に工事をさせているのは江戸川区。区が見解を示すべき」との応酬があり、最後には「国の主張と同じ」と認めるに至りました。しかしその内容は、別訴における被告の主張とは異なるもの。すかさず原告代理人・福田健治弁護士が「区が同じ主張をすることを調書にとっていただきたい」と。 

 この調書というもの、お願いしないととってもらえないらしい。チョー重要発言が続く展開となっているのに。書記官のお仕事とは何なのか? 裁判も公開で行われているなら、いまどき、インターネット中継でもしてほしいもの。議会改革も遅々としているけれど、国会や多くの地方議会では中継や録画公開は今やスタンダード。司法の場は、遅々どころか、変わらないままのよう。

 日本の法廷で傍聴人がメモをとることは、法廷でメモをとっていて注意されたアメリカの弁護士さんが提訴したことで可能に。敗訴(1989年 レペタ法廷メモ事件)したものの、これを機にメモが認められるようになっています。主権者の声を司法にも向け、三権分立のもと、市民の最後の砦としての、あるべき姿を見たいもの。

 裁判長は、①計画変更なき仮換地処分は違法 ②本来はスーパー堤防を目的とした動機のもとでなされた区画整理の仮換地処分は違法 との主張をする原告に対し、すでに計画変更されている現状もあることから、今後も2つを維持するのか、ひとつに絞るのか、整理を求めました。  

 第7回期日は、8月26日(水)午前11時、803号法廷 です。