地盤強度不足で国交省に質問~北小岩スーパー堤防事業
北小岩1丁目東部地区において、スーパー堤防の盛り土施工後、地盤強度が宅地をつくる基準を満たさない箇所があることが判明したことを受け、13日(月)、国土交通委員を務められている山添拓参議院議員が国交省にヒアリングを行い、地元住民も同席させていただきました。説明されたのは、水管理・国土保全局治水課の企画専門官ら3名の方々です。主な質疑をご紹介します。なお、公共事業チェック議員の会も、翌14日(火)、同様のヒアリングを行っています。
●スーパー堤防事業の現状について
対象5河川における整備率は、2015年度末で、120kmのうち15kmで10%。このうち、基本断面形が保たれているのは3.1kmで整備率は2.6%。事業の全体予算は15年度41億円、16年度34億円。17年度も同程度の見込み。北小岩1丁目は基本断面が確保されている。
●今回、盛り土施行者の国が調査を行わなかった理由について
盛り土工事着手前には、既存データを含め、8ヶ所のボーリングデータで地質を把握した。余分な土を盛り、荷重をかけて圧密促進し、沈下状況を計測したうえで、沈下が終息したことを確認してから江戸川区に引き渡した。堤防及び宅地造成に耐えられると判断した。スーパー堤防の管理の仕方として、もともと宅地地盤調査までは行っていないが、現在、区が行う調査を国も一緒に行っている。
●地耐力不足の原因について
盛り土ではなく、原地盤によるもの。
●スーパー堤防の強度の基準について
政令である河川管理施設等構造令によって定められている。(下記参照)
●スーパー堤防完成後、土地の引き渡し前に地盤の不具合が発生した事例について
ここ10年ほどはない。その前のことまでは把握できていない。
●スーパー堤防完成後、発生した法面崩れや地盤沈下、周辺冠水などの事例とその対策について
・2004年9月 荒川沿いの北区北赤羽
台風による降雨で法面崩れがあった。盛り土の期間を1期、2期と間をあけて実施したことが原因。境目にクラックができ、断続的に雨が入ってしまった。法面の勾配を緩やかにし、浸透を防ぐため、排水側溝を設け、速やかに排水するようにした。
・2011年3月(東日本大震災)
利根川の津宮地区、須賀地区で、擁壁の目地開きがあった。津宮は管理者である国が、須賀は自治体が目地を補修した。
●移転中の権利者への保障の必要性が生じた場合の対応について
個別に対応する。
国は、8ヶ所でボーリングを実施したと言いますが、6ヶ所は既存の堤防での調査であり、宅地となる地区内で実施すべきとの住民の指摘を受け、ようやく2ヶ所実施したのでした。明らかにボーリング調査不足であり、そうした状況下、地盤改良をしない判断をしたことがまず問われます。
また、盛り土の上に家を建てることがわかっていながら、単に堤防としての構造にしか責任を負わないという姿勢は住民不在も甚だしく、今回の事態を重く受け止め、堤防技術のみならず、住民生活こそを中心に据えて、制度の見直しをはかる必要があります。
一方、江戸川区は、スーパー堤防整備方針の見直しを迫られるたび、「国の制度であり、自治体としては国に従う」としてきましたが、果たしてそれでいいのか。住民に最も近い政府として、その判断を問い直すべきです。
2017年度予算特別委員会土木費審査における、生活者ネットワーク・本西みつえ議員の質疑もあわせてご覧ください。
区と国は、すでにすべての画地での調査を終え、3月30日(木)、権利者の方のみを対象に、今後の対応策等について、説明会を実施することとなりました。
なお、山添議員が22日、国土交通委員会で本件について質問されました。こちら(1:48~)から。
第十八条 堤防は、護岸、水制その他これらに類する施設と一体として、計画高水位(高潮区間にあつては、計画高潮位)以下の水位の流水の通常の作用に対して安全な構造とするものとする。
2 高規格堤防にあつては、前項の規定によるほか、高規格堤防特別区域内の土地が通常の利用に供されても、高規格堤防及びその地盤が、護岸、水制その他これらに類する施設と一体として、高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用に対して耐えることができるものとするものとする。
3 高規格堤防は、予想される荷重によつて洗掘破壊、滑り破壊又は浸透破壊が生じない構造とするものとし、かつ、その地盤は、予想される荷重によつて滑り破壊、浸透破壊又は液状化破壊が生じないものとするものとする。