堤防の構造的な安全確保にとことん取り組め~江戸川区スーパー堤防裁判報告集会⑤
かつて建設省土木研究所で次長を務められた石崎勝義さんは、2016年4月、同じこの場所で「あるべき安全な堤防」について講演されたことを述懐され、「耐越水堤防整備がなされていれば、鬼怒川水害をはじめ、昨今の水害は起きなかった」と話されました。
「鬼怒川堤防の決壊のあと、行政も少しは反省の姿を見せようとして、危機管理型ハード対策を始めたが、西日本豪雨が起き、もろくも役に立たないことがわかった」。
そして、台風19号により大きな被害を受けた長野の住民が400人、300人という大きな集会を持った際、「フロンティア堤防」という工法があることを宣伝、カラーのパンフレットをつくり、1万枚を新聞に折り込んだといいます。
国も治水の技術検討会をつくり、越水に耐える堤防のあり方をどうするかを協議。危機管理型ハードでは不十分であることを認め、堤防を決壊しにくくする、という方針を昨年8月頃出した、という経緯を話されました。ただし「国が率先してやろうとしたものではなく、地元住民の要求に基づくものであった」とも。
では、国は堤防決壊をどう考えてきたのか。石崎さんは、この5年間の研究の結論として、以下のポイントを指摘されました。
1992年頃 国はときどき起きる堤防決壊のうまみを知った
2002年頃 国は堤防決壊を無くそうとする努力をつぶしてきた
2015年頃 国は堤防決壊を無くそうと見せかけている
2021年 国は堤防決壊を温存しようとしている
「国は、堤防決壊があるとありがたい。ときどき起こるようにしたい―そういう考えてやっていることがわかった。危機管理型ハードでは越水すれば侵食されてしまう。それは土をむき出しにしているところが残っているからだ。水は土を侵食する。大きな穴があく。そこに水が集まる。だから必ず土の部分を残している。つまり、国は決壊が起きることを望んでいるのだ。それは予算がほしいから。ダムをつくるためには予算がないといけない。大きな水害が起きると、とたんに予算がつく。西日本のときには3兆円。今回の水害では15兆円。」
当日配付された資料では、江戸川区の元土木部長が著書で水害問題の大きさを説明してはいるが、ではどうしたらいいのか、その対策については言及がない、とも指摘。効用を主張し推進してきたスーパー堤防を、最近は「命山」と称して、水害時に逃げ込む場所の役割にまで言及しているが、まずは水害が起きないように堤防の構造的な安全確保にとことん取り組むことが重要、と強調されています。こちらから。