治水政策の理不尽~京成本線荒川橋梁架替、13年も延期

お伝えしているとおり、荒川に架かる京成本線橋梁部は周辺より3.7mも低くなっており、首都圏の治水上の弱点との認識のもと、「荒川水系河川整備計画」にも橋梁架替事業が明記されています(P50)。

実際、2019年の東日本台風による洪水では、水位が桁下高まであと1.2mという高さまで上昇。江戸川区を含む流域5区の区長らも20年、21年と連続して速やかな工事の推進を要望してきたところです。

本事業の延長は、京成関屋駅(足立区)~堀切菖蒲園駅(葛飾区)間の約1.5km。現在より15m上流に架け替えることにより堤防の嵩上げ、拡幅を行うとされ、令和2年(2020年)の再評価の事業工程表(P4)によれば、2004年の現地調査に始まり、環境影響評価、詳細設計、用地取得等を経て、工事は2022年から実施、2024年に完成とされていました。

ところが、昨年12月1日開催された国交省関東地方整備局のフォローアップ委員会は、再評価の結果、本事業の完成時期を2037年度と、13年延期する決定をしました(P12)。

同日公表された資料によれば、「『地域の意向等』を踏まえ、用地取得が少なくなるよう架け替えルートを変更した」(P10)とのこと。新橋へと一度に切り替えるという当初計画をやめ、多段階での架替へと見直した結果、事業費も364億円から730億円に倍にアップしました(P11)。

沿川5区の区長がそろって連続要望するほど重大な本事業の完成が13年延期されるということについて、『地域の意向等』を確認しようと、12月中旬、ネット議員がまず江戸川区に聞いてみたところ、把握しておらず、追って問い合わせた国交省からは再評価資料を見るよう言われたのみとのこと。

次いで、今月行った葛飾区へのヒアリングでは、

「もともといつ完成とは示されていなかった。これまでも葛飾区ではいつ完成かという問い合わせがあった時も、完了時期は示されていないと答えていた。このたび初めて完成時期が示されたということであり、遅れたというのは間違った認識。工事の完了は2037年度だが、嵩上げはそれより早い時期に完了する。なるべく早く嵩上げが完了するよう要望している」との回答。

前回令和2年(2020年)の再評価の事業工程表(上記)には、工事は令和6年(2024年)度まで、平成27年(2015年)の再評価(P4)には平成36年(2024年)度まで、いずれも「2024年度」とされ、それが今回「2037年度」までとされたというのに「遅れたというのは間違った認識」とは驚きです。もしそうであるならば、再評価のたびに公表されている事業工程表は市民を欺くシロモノということになるでしょう。

昨年12月、国交省では基幹統計「建設工事受注動態統計」の書き換えが長年にわたり行われていたという信じられない事態が明るみに出ました。いったい何のために行ってきたことなのか・・。葛飾区の今回の回答もまた、市民をかく乱させるものです。

とはいえ、管理者である国と当該地域の説明が異なることは珍しいことでもなく、篠崎スーパー堤防でも。こちらから。

気候危機により、水害が激甚化、頻発化する今日、荒川の脆弱な箇所を速やかに強化することは流域住民、そして首都圏の安全を格段に向上させる方策であることは誰の目にも明らかです。

その方策が13年も延期される一方で、治水効果も立証されず、問答無用で地権者の権利に踏み込む高規格(スーパー)堤防事業は計画通り進んでいくことの理不尽に愕然とするばかりです。