「仮換地指定処分」なきスーパー堤防事業~上篠崎一丁目北部土地区画整理事業

寺院・幼稚園が移転予定の第一次盛土地では「仮換地指定」なきままスーパー堤防工事が行われている。中央奥に現在のお寺の本堂が見える。(2024/12/24 飯田康男さん撮影)

「江戸川区スーパー堤防問題を考える協議会」は、この1月で99回目を迎えました。

1987(昭和63)年に国が本事業を創設したことにより、江戸川区は1999年、「江戸川区街づくり基本プラン」に本事業を明記。2006(平成18)年の「利根川水系河川整備基本方針」を受け、同年6月には事業対象地域「北小岩1丁目東部地区」での「まちづくりニュース」発行をスタート。同年12月に「江戸川区スーパー堤防整備方針」を策定、翌07(平成19)年7月から、同地区において土地の先行買収が始まりました。

肝心の住民の意思は置き去りのまま、推進に躍起になる行政の動きを受け、江戸川沿川での対象エリアとされ、まず区の説明を受けることになった①「北小岩地区」、ピンポイントで最初に着手されることになった②「北小岩1丁目東部地区(18班)」、その下流の③「篠崎公園地区」において、事業に反対する住民らが、3地区の情報交換を含めた協議・協力の場を持とうと、2010年、法律家の助言も得ながら設立の検討をはじめ、翌11(平成23)年11月から協議会が持たれるようになりました。当初は毎月の開催でしたが、途中から隔月となり、今日に至っています。

1月の協議会では、牧野研二区議より「令和6年度江戸川区行政評価実施報告書」から、「上篠崎一丁目北部土地区画整理事業費」(P68)の評価について報告され、共有しました。

この中で注目すべきは、評価委員と区当局の質疑応答の部分(P69)。 質疑は2024年9月。

Q:まだ移転されていない家はどうするのか。「寺院関係者との合意形成を図り」とあるが、幼稚園とは合意が取れていて、寺院とは合意が取れていないという状況に相違ないか?

A:移転は、高規格堤防工事を伴う区画整理による基盤整備を行う前に、「仮換地指定」を行い、移転補償契約を行ったあと、原則、所有者の皆さん自身で移転していただきます。本事業は、権利者負担の軽減等のため、段階的(全体を一度に工事するのではなく分割施工)に盛土、 基盤整備工事を行っていきます。そのため、工事に着手する前に実施する「仮換地指定」も段階的となります。現在、移転されていない家は、「仮換地指定」をまだ行っていない宅地上にある建物です。今後、工事に着手する時期が来ましたら、「仮換地指定」を行い、移転補償契約し、 移転していただく予定です。寺院と幼稚園は、まだ仮換地指定を行っていませんが、一般的な宅地の移転と異なり、建築計画を進めるうえで、大変な時間と労力を要するため、既に移転に向けての協議を具体に進めています。今後移転補償契約を行いますが、移転に対しては双方理解を示していただいています。ただし、墓地を所有する檀家や総代については、これから墓地の移転に向けて具体な話を進めていきます。

自治体施行による「土地区画整理事業」の法的な流れは、①都市計画決定→②事業計画決定→③仮換地指定→④換地計画決定→⑤換地処分

土地区画整理事業は⑤の「換地処分」が最終目標です。そしてここに至る最大のポイントが③の「仮換地指定」であることは論を待ちません。

つまり、仮に換地を決めて、どんどん工事を進めていく―。道路をつくり、あるいは今までの道路を廃止し、家を移転させる。こうして既成事実が重ねられ、仮がとれて換地処分になる、ということ。

あなたはこういう地番の場所に何坪の土地を所有しているが、それをこっち側の何番の地番に何坪にして変える、という通知が「行政処分」としてなされるのです。

●引用文献・・・「なるほど ザ 区画整理~住民のまちづくりと区画整理」(区画整理・再開発対策全国連絡会議&安藤元雄 編)

写真の第一次盛土上には浅間幼稚園と妙勝寺が移転することになっています。事業推進には法的なプロセスを経ることが前提のはずですが、「移転については理解を示していただいている」中で、これがなされていないということは最終合意ができていないということ。すなわち、移転補償についての合意がなされていないという状況にあると推察されます。

先に行われた上記②の地区「北小岩一丁目東部地区(18班)」では、当然ながら、すべての権利者への「仮換地指定」処分がなされた後、共同実施の国のスーパー堤防事業が行われています。

評価委員には「仮換地指定という手続きを踏まずとも、任意事業である国のスーパー堤防事業に着手できるのか?」とも質問してほしかったところです。

この重要な事実について、区は議会でも説明をしておらず、昨年末発行の、この行政評価実施報告書を通して公表した格好です。